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高校ラグビーの、W杯とは違う味わい。
王者・桐蔭の「個が際立たない」強さ。
posted2020/01/10 19:00
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph by
Kyodo News
この場に覇者は決するのだ。だから、記者であれ実況解説者であれ、伝える立場の者は攻防を象徴するシーンを見つけて、書いたり話したいと願う。
全国高校ラグビー大会の決勝。後半の23分24秒、そのまま25、26秒のあたり。あった。そんな場面が。
15-14。最少スコアを先行の桐蔭学園がラックを重ねて攻める。御所実業高校はそれが身上である集団的防御で阻む。オールブラックスのFWの結束を表す古典的なたとえなら「1枚の黒い毛布」が楕円球をくるもうとする。この大会でずっと光を放った「ゴセのターンオーバー」の機会到来、複数が低く上体をねじ込んでラッシュをかけた。
奪うか。
数分後に響く終了の笛に腕突き上げたのは桐蔭学園だった。つまり奪えなかった。
勝負を分けた接点での激突。
桐蔭学園も「接点という競技」の常なる王者である。才能の大いに注目された背番号10、伊藤大祐までが、いまここが踏ん張りどころと、普段の働き場である設計室から建設現場へ身を投じて、からくもボールをプロテクトする。やや下げられたラックより右へ。大物ロック、青木恵斗が強さと巧さのカクテルであるオフロードを実行、14番の西川賢哉がインゴールへ躍り込んだ。
御所実業にすれば勝負をかけた接点で奪い切れず、その分、外の防御の厚みと集中力をなくした。得失点の推移、残り時間、そして、なにより両校のひとりひとりをファイナリストたらしめた接点での激突という観点において、まさに勝負の分かれ目だった。