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悲願のトップリーグ初勝利を目指して。
三菱重工ダイナボアーズと土佐誠主将の挑戦。
posted2020/01/10 11:00
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Hideki Sugiyama
少し前なら格闘技や柔道あたりの選手と間違われることもあったろうか。188cm、112kgの巨大な体躯に“餃子耳”とあれば、そうであっても仕方がない。
だが、2019年秋、日本列島に桜の大旋風が巻き起こってからは風向きがいっぺんに変わった。ホームタウンの相模原で食事に出かければ「ダイナボアーズの選手? ラグビー面白いよね。今すごいよね」と声をかけられ、小学校に足を運んで「ラグビーを知っている人?」と尋ねれば、クラスの9割の子供が手を上げるようになった。これまでは手を上げない子供の方が9割だったのに――。
「W杯を見て日本のラグビーもここまでできるんだと自信になったし、ラグビーをやっていてよかったなと思いました」
土佐が歩んだ紆余曲折のラグビー人生。
三菱重工相模原ダイナボアーズの土佐誠も、同じラガーマンとしてジャパンの大活躍には誇らしさを感じた。今回の代表にはU23日本代表候補のセレクション合宿などで一緒に過ごした堀江翔太がいて、田村優や茂野海人、中島イシレリとNECで同じ釜の飯を食った仲間たちがいる。だから彼らの快挙を余計に身近に感じることもできる。
「ただし……」
と土佐は言った。
「まだ完全に観客じゃないというか、違ったアングルで見てしまう部分がありました。トップリーグで対戦する相手だし、リーグには他国の代表も参加してくる。『こいつと対戦するときはどうしよう?』と、どの試合もそう考えながら見ていました」
土佐ほど紆余曲折のラグビー人生もそうはない。
尾道高から関東学院大に進むと、2年時には主力として大学選手権制覇に貢献した。ところが3年のシーズン中、部員12人が書類送検される大麻事件が発覚。チームは活動停止に追い込まれた。