スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
箱根で敗れた各校の悔恨とお手上げ。
早稲田、東洋、駒澤、國學院、東海。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2020/01/09 20:00
東海大は前年の優勝タイムを上回る走りを見せたが、青学の爆発の前に屈することになった。
國學院、前田監督の感涙。
國學院大の前田康弘監督は、駒大時代に大八木監督の薫陶を受けていた。
今回、大学史上最高位となる3位。前田監督は大手町で泣いていた。
「諦めないことが大切だと、選手たちに教わりました」
大会前の目標は「往路優勝、総合3位」。往路は青山学院大のスピードを前に2位に終わったが、総合3位のターゲットは攻略した。しかも、10区の殿地(琢朗・2年)にタスキが渡った時点では5位。3位の東京国際大とは1分以上の差があり、逆転は困難と思われた。
しかし、國學院大には運も味方した。
先行する東京国際大と明大が「3位」狙いで牽制し合っていたのだ。ラスト勝負のイメージが共有されているから、どうしてもゆったりしたペースになる。
失うもののない殿地は、果敢に飛ばした(そして、殿地を追って6位から走り出した帝京大4年の吉野貴大の追い上げも素晴らしかった!)。
すると、前方に2校の背中が見えたが、殿地の走りが見事だったのは、追いついてから様子を見ることなく、積極的に前に出たことだ。
彼には、前しか見えていないように思えた。
國學院が発揮した育成の結果。
前田監督もいう。
「殿地、魂の走りでした」
高速駅伝が展開されたなかで、國學院大が3位に入ったのは意義深い。
なぜなら、リクルーティングでは他校の後塵を拝しているからだ。すなわち、育成が実を結んだことになる。
今年の國學院大は、とても学生らしいチームだった。4年生の「三本の矢」、土方英和(2区区間8位)、青木祐人(3区区間5位)、浦野雄平(5区区間3位)を中心に、4年生4人、3年生1人、2年生4人、1年生1人という布陣で臨んだ。前田監督は感無量といった表情。
「正直、9区が終わったところでは、3位は諦めてました。監督が諦めてるのに、殿地は諦めてなくて……。総合3位という目標を掲げたのを正解にしてくれたのは、選手たちです」