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コパ初戦を見たオシムから森保Jへ。
「素晴らしい敗北も存在する」
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![田村修一](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/06/20 18:00
![コパ初戦を見たオシムから森保Jへ。「素晴らしい敗北も存在する」<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/700/img_49196afe246283fbd68cedab7e81037e151501.jpg)
スコア上では完膚なきまでに叩きのめされた日本だが、オシムはチリ戦の前半を「誇りに思っていい」と評価した。
長谷部の出場した試合を見たが。
――技術だけに限らず、本当にいろいろなことがあります。
「いや、私が言いたいのは技術に関してだ。技術が道具であり手段であることをわれわれはとかく忘れがちだ。技術は目的のための手段だ。手段として活用したときに、さらなる進歩が生まれる」
――実践的な技術ということですね。
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「日本も大きな進歩を遂げた。この試合のすぐ後で、私は長谷部(誠)の出場した試合を見た。だから言うのだが、すべてが可能だ。そこにこそやるべきことがある。とりわけサッカーは、努力すればするほど進歩も促進される。
股抜きをして喜んでいるようでは駄目だ。的確なコントロールをすれば、もっと別のやり方ができる。忘れてならないのは、技術はもちろんフィジカルでも十分にフィットしていけば、より高い次元に到達できるということだ。
ときに私はこうした試合でも“OK”と言うし、素晴らしいと思うこともある。あなた方には、なぜこの内容でこの結果になったのかを分析するための十分な時間がある。真実こそ追求すべきで、言い訳を求めてはならない。特に言い訳のための言い訳を求めるべきではない。そんなことでは自らを救うことはできない」
――派手な内容と衝撃的な結果にばかり、目を奪われてはならないわけですね。
「それに加えて、細かいことにばかり囚われることなく総体的に俯瞰して見る。日本がとてもアグレッシブにプレーしたことは認めるし、前半については誇りに思っていい。だが後半はどうだったか。そしてどこがよくてどこが悪かったか。技術では彼らの方が優れていてスピードもあった。そうしたことを分析するのは容易だ。
チリはブラジルとアルゼンチンに次いで大会で3番目の実力を持つ国だ。チリは彼らに迫る力を持っているが、他にもコロンビアがいる。彼らもまたずっと安定している。そうした国々――常に誰かと比較することは必要だ。自分たちが何を求め、どこに力を注げばいいかがわかるからだ。
日本がポジティブな方向に大きな一歩を進めているのは間違いない。この歩みを止めるべきではないし、あなた方が成し遂げてきたことと共に生きるべきだ。そこにこそ可能性があるが、同時にまだまだやるべきこともたくさんある。
あなた方は、今はこの敗北に少し打ちひしがれている。それでも人生は続いていくことを忘れるべきではない。こうした衝撃を受けた後の方が、よりよい人生を歩めるようになることが多々ある。それこそが敗北のポジティブな面であり、素晴らしい敗北も存在する」