ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
コパ初戦を見たオシムから森保Jへ。
「素晴らしい敗北も存在する」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/06/20 18:00
スコア上では完膚なきまでに叩きのめされた日本だが、オシムはチリ戦の前半を「誇りに思っていい」と評価した。
まっすぐに育てる。それだけだ。
――その通りかもしれません。
「とはいえ敗北であることは認めねばならない。だからこそ綿密に分析して、録画したビデオを何度も見直してみる。どんなミスを犯し、チリの選手たちとはどんな違い、どんな差があったのか。
すでに何人かの選手たちは、冷静かつ着実に分析を始めているだろう。そして常にキャビアのある生活を送れるわけではないことを十分に理解しているだろう。
今は多くの若者たちがそういったところに影響を受けている。彼らは進化の真っ只中にある。彼らをまっすぐに育てる。それだけのことだ。
日本のサッカーはすでに大きく進歩した。人々は喜んでスタジアムに出かけ、スタンドは常に人で埋め尽くされている。それ以上の素晴らしい環境は望むべくもない。自分がどんな環境、どんな状況の中でプレーしているかは忘れるべきではない。
いくつかの試合では特定の選手が個の力で試合を決める。今、優れたチームは個の優れた選手が補強されている。というのもヨーロッパのほぼすべてのチームが、彼らの力に多かれ少なかれ頼っている。
それは言い換えればフィジカルへの依存であり、大きな才能に溢れた選手たちに依存している。大きな才能を持ち、ひとりで試合を決められる選手たちだ。かつてのメッシがそうであったように。今、彼の力はそこまでではない。だが次の人材を見出すまでにさしたる時間はかからないだろう」
シンプルなことこそ実践は難しい。
――コパに臨んでいる日本の若い選手たちは、大会を通じてどこまで進歩していくのでしょうか?
「どんなスポーツにしろ進歩を望むのであれば、最初はシンプルなことから始める。サッカーにとってシンプルなものとはフィジカルだ。ボールコントロールも言葉にすれば簡単だが、実践するとなると難しい。ディテール自体はシンプルでも、その実践は本当に難しいからだ。
試合では結果を求める相手がいて、彼らもまた常に勝ちを求めている。その現実に慣れなければならない。負けてしまったら頭を垂れてピッチを去る。それだけだ」