甲子園の風BACK NUMBER
奥川恭伸、キミは何に負けたのか?
応援、サイン盗み……論点多き試合。
posted2019/03/29 14:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Kyodo News
さまざまなことが起き、さまざまなことを考えさせられる試合になった。
3月28日、第91回センバツは2回戦に入った。平日にもかかわらず甲子園球場に3万8000もの観衆を集めたのは、星稜(石川)対習志野(千葉)の一戦だ。
星稜の右腕・奥川恭伸が、17奪三振をマークした1回戦に続いて、どれほどの快投を演じてくれるのか。注目が集まっていた。
奥川の立ち上がりは、力みが感じられず、悪くないように見えた。味方が1点を先制した直後の3回表には、146、147、149kmと直球の球速を上げていき、いよいよスイッチが入ったかに思われた。
星稜の連携プレーは乱れ続けた……。
奥川はこう振り返る。
「マウンドに上がってから、少し体の重さ、だるさを感じた。変化球もいまいちキレてなかったですし、まっすぐの走りとしても前回に比べるとあまりよくなかったので、打たせていこうかなと思っていた」
打たせて取る投球を意識しながらも、3回までに5つの三振を奪った。
潮目が変わったのは4回だ。習志野は初ヒットで出塁した一塁走者をバントで送る作戦に出る。その打球がピッチャー前への小フライになると、奥川はわざとワンバウンドさせてから捕球。一塁フォースアウトから二塁タッチプレーの併殺を試みたが、一塁でのアウトしか取れなかった。
その後、2アウト一、二塁へと状況は変わり、6番・竹縄俊希と対戦。2球で追い込みながらも、高めに浮いたスライダーをライト前に弾き返され、同点とされる。
結果論だが、バント小フライを狙いどおり併殺に仕留められていれば、防げた失点ではあった。
この場面も含めて、星稜の連携プレーは、習志野応援席から響くブラスバンドの音量に影響を受けた可能性がある。