錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の復活レベルはほぼ100%。
ただ危険な実力者が続々と台頭。
posted2018/10/10 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
最後のツアー優勝から2年8カ月。右手首の故障からの完全復活は先月の全米オープンのベスト4で証明したはずだが、2012年から毎年のように手に入れていたツアータイトルをつかめない。
先週の楽天ジャパンオープンの決勝戦で、錦織圭は次世代勢力の1人として期待される22歳のダニール・メドベージェフに敗れて、決勝戦8連敗目を喫した。
2016年2月にメンフィスで11回目のツアー優勝を遂げるまで、準優勝の数はその半分以下の5回で、7割近い決勝での勝率を誇っていた。そんな錦織が陥っている決勝での黒星続き。
8連敗の相手はというと、ノバク・ジョコビッチとラファエル・ナダルに対して2回ずつ、それ以外は対戦当時のランキングで自分より下だ。マリン・チリッチ(12位)、グリゴール・ディミトロフ(17位)、アレクサンドル・ドルゴポロフ(66位)、そして予選上がりでもあった今回のメドベージェフ(32位)。相手を見れば“取りこぼし感”はちらほらあり、中でも今回のメドベージェフ戦にはそれを強く感じるかもしれない。
予選上がりだが実力と勢いは本物。
しかし予選上がりといっても、実際のレベルはその言葉から受けるイメージとかけ離れている。エントリー時のランキングがまだ57位だったため予選からのスタートだったが、32位ならグランドスラムでシードがつく数字だ。22歳という若さと新婚ホヤホヤという幸せも相まって、その勢いは32位というランキングでも十分に表されていなかっただろう。
実際、決勝戦では完璧ともいえるプレーを展開した。198cmの長身からの高速サーブは、計測器が示した時速198kmや200kmというスピードをはるかに上回る体感速度だったはずだ。ツアー屈指のレシーバーと言われる錦織が、あれほど“読み”を発揮できないことも珍しい。
ラリー戦に持ち込んでも、リーチの長いメドベージェフの堅いディフェンスの前に、錦織の持ち味であるハイテンポの攻撃が効かず、逆にフラット系の伸びのあるショットで深く押し込まれ、左右に振られ、ミスが増えた。