錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の復活レベルはほぼ100%。
ただ危険な実力者が続々と台頭。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2018/10/10 11:30
楽天オープンで準優勝に終わった錦織圭。ノーシード相手でも気を抜けない対戦が続くのが今のテニス界だ。
ラッキールーザーが史上最多。
錦織は試合後、「彼の球質や戦術に対して、この速いコートも重なって、自分がいい感覚を得られなかった」「最初から今日はいいテニスができなさそうだと感じていた」「アンフォーストエラーが多くて、自分にいいところがあまりなかった」などと振り返った。
前日まで抜群のキレとスピードを見せ、豊かな発想力で多彩なテニスを展開していた錦織は別人だった。特に元世界7位のリシャール・ガスケをストレートで破った準決勝は申し分なく、それを見る限り錦織の復活レベルはほぼ100%といっていい。決勝に関しては、まあこんな日もある、と片付けたいところではある。
ただ、そうも言いきれない不安の背景にあるのが、今回のメドベージェフのような“危険”な選手が増殖しているツアーの現状だ。
前述した通り、優勝したメドベージェフは予選からの勝ち上がりだったが、今季ここまでに同じく予選上がりやラッキールーザー(予選敗退後、本戦欠場者が出たために繰り上がった選手)が優勝した大会が、史上最多の9つもある。メドベージェフ自身、1月のシドニーに続いて2度目となる予選からの快挙だった。
西岡、ダニエルにもチャンスが。
先々週に中国の深センで優勝した西岡良仁もその1人で、「波乱は確かに多くなっている。今後も予選上がりが優勝するということはありえるし、全然不思議じゃない」と言っていたが、4月にツアー初優勝を果たしたダニエル太郎は“危険区域”をさらに広げてこう断言した。
「フィジカルトレーニングとか栄養とかいろんな面で、選手は昔よりプロフェッショナルになっている。300位くらいの選手でもそういうことをちゃんとやっていて、みんなが思うほど彼らとトップ100との差はない。トップ100になれば、トップ20の選手に勝つチャンスはいくらでもある」
つい1年前まで300位前後の選手と頻繁に対戦していたから言いきることのできる実感なのだろう。ちなみにダニエルは予選からの優勝ではなかったが、当時のランキング114位は今年のツアー優勝者の中で5番目に低い。