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J新卒の年俸上限460万円は適正か?
流経大・小池裕太の例から考える。 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byReiko Iijima/JUFA Kanto

posted2018/09/29 17:00

J新卒の年俸上限460万円は適正か?流経大・小池裕太の例から考える。<Number Web> photograph by Reiko Iijima/JUFA Kanto

Jリーグの順位ごとの賞金も上がっている。小池裕太のような選手に460万円しか提示できないままでは、海外クラブへの直接加入は増えるだろう。

岡田武史氏「21歳までに行ったほうがいい」

「将来、欧州に行きたいのであれば、21歳までに行ったほうがいい」

 足踏みする本人の心が変わったのは、ポルティモネンセの誘いがきっかけだった。同クラブに近い仲介人と知り合いだったFC今治(JFL)のオーナーで元日本代表監督の岡田武史氏から、21歳までに欧州移籍するメリットを力説された。中野監督も同席した三者での話し合いは30分間。元日本代表監督の言葉は、小池の心に響いた。

「同じような説明をしても、岡田さんが言うと違いますね」と中野監督は苦笑していた。

 その後、本人がポルティモネンセとシント・トロイデンの両クラブに直接出向き、中野監督とも相談した上で、後者を選ぶ決断を下した。

 スポーツ推薦で入学した選手が4年生の途中で退部することになったが、流経大に限っては問題になっていない。双方合意のもとで、円満に退部。むしろ、21歳で欧州移籍のチャンスをつかんだことで学校関係者からは一目を置かれ、祝福ムードもある。

「いつ、どのタイミングで、どの職業を選ぶかは本人の自由。尊重したいと思う」

大学に払われる育成費もJより高額。

 大学側も大きな恩恵を受ける。大学名が宣伝されるだけでなく、シント・トロイデンからはトレーニングコンペンセーション(育成費)が支払われる。

 今回の場合はJリーグが定めるトレーニング費用の120万円(1年30万円の4年分)と比べると、2倍から3倍の金額。本来、日本からベルギーへ移籍する場合、FIFAの定めた規約では育成した機関は24万ユーロ(1年6万ユーロの4年分)の育成費を請求できるが、両者の話し合いにより、一定の額で折り合いをつけた。それでも、国内ルールとの差額は大きい。

 Jリーグの実情は、規約にある原則120万円から減額して大学側に支払われることも珍しくない。今年9月にようやく満額での支払いの義務化が決まり、来季からはJ1が現状維持の120万円、J2は80万円、J3は20万円となった。

 ちなみにJクラブから支払われるトレーニング費用の40%は大学サッカー連盟に納め、大学側は60%を受け取っている。大学連盟はJクラブから支払われるトレーニング費用の積み立てと日本サッカー協会からの支援(通常年800万円、ユニバーシアード開催年1300万円)などを受け、全日本大学選抜などの海外遠征費に充てている。ただ、年代別代表の強化費などに比べると、予算のケタが違うという。

【次ページ】 森保Jの初招集メンバーには大卒者が9人。

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