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J新卒の年俸上限460万円は適正か?
流経大・小池裕太の例から考える。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byReiko Iijima/JUFA Kanto
posted2018/09/29 17:00
Jリーグの順位ごとの賞金も上がっている。小池裕太のような選手に460万円しか提示できないままでは、海外クラブへの直接加入は増えるだろう。
イニエスタの年俸は32億円とも言われる中で。
横浜Fの消滅から20年。時代は随分と変化した。Jリーグは昨年度からスポーツ動画配信サービス「DAZN」と10年総額2100億円の放映権契約を結び、変革期を迎えている。
今夏には元スペイン代表のアンドレス・イニエスタが32億円とも言われる年俸でヴィッセル神戸に加入。Jリーグでは大物獲得を歓迎する傾向にあり、外国人枠の拡大の議論もされているところだ。
この時期だからこそ、60人以上の現役Jリーガーを輩出する流通経済大の中野雄二監督は声を上げる。
「C契約(年俸制限の規約)もそろそろ見直す時期。もう自由競争にしてもいいのではないか。日本の若い有能な選手たちを適正に評価してもらいたい」
海外クラブなら1000万円超は普通。
今年の8月下旬、同大学の小池裕太はJクラブからの誘いを断り、休学してベルギーのシント・トロイデンとプロ契約を結んだ。技巧派の左サイドバックへの評価は高く、提示額はJクラブがオファーできる制限額の2倍以上。年俸は1000万円を超える額だった。日本独自のルールは、国外クラブには適用されることはないのだ。
4年前には長澤和輝(現浦和レッズ)が専修大を卒業後、Jクラブを経ずに直接ドイツのケルンに加入している。中野監督は若い世代の海外志向が強いことを踏まえた上で、Jリーグの規約改定が一向に進まない現状を危惧している。
「毎年、大学サッカーからこのレベルの選手は出てこないかもしれないが、出てきたときには欧州に直接行く流れになるかもしれない。金銭面の差も大きい。本人が欧州移籍を望んで、実力がともなっていれば、私は勧めるでしょうね」
中野監督は3年半、大学で指導してきた小池の将来性を高く買っており、「これまで指導してきた選手の中でも一番うまい。長友(佑都)以上の選手になる」と話す。
キックの種類が豊富で、精度も申し分ない。左利きという付加価値まで付く。4年後のカタールW杯では日本代表の長友佑都に取って代わる存在になってほしいと期待を込める。本人は当初、Jクラブで活躍した後に海外移籍を目論んでいたが、中野監督はあえて、このタイミングで背中を押した。