ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
W杯優勝は20年ぶり2度目の偉業!
個が組織の中で輝いた若きフランス。
posted2018/07/16 13:00
text by
原山裕平Yuhei Harayama
photograph by
Getty Images
主人公として描きやすかったのは、クロアチアの方だったかもしれない。
華奢で小柄なキャプテンに導かれた東欧の小国が、ギリギリの戦いを繰り返しながら、ファイナルの舞台に辿り着く。3戦連続の延長戦を経て心身ともに疲弊した選手たちは、追い詰められてズタボロになっても、底知れぬ執念と団結力を見せ、最後の戦いで強大な相手を撃破する。そんなストーリーを期待していたファンも少なくなかったはずだ。
しかし、現実は少年マンガのような展開とはならなかった。
クロアチアの望んだシナリオを破綻させ、ロシアの地を舞台とした戦いの物語の主役となったのは、若きタレント軍団フランスだった。
均衡を破ったのは、またセットプレー!
手堅いサッカーで決勝まで勝ち上がってきたフランスと、コンディションに不安のあるクロアチア。決勝特有の緊迫感も相まって、立ち上がりは予想通りに静かな展開となった。ボールを保持したのはクロアチアだったが、フランスにとっては想定内。素早く切り替え、カウンターを狙うこれまで通りの戦略で、相手の隙を窺った。
最も警戒すべきルカ・モドリッチには、エンゴロ・カンテを監視役として張り付かせる。ラウンド16のアルゼンチン戦でリオネル・メッシを封じた守備の達人は、この試合でも与えられた大役を十二分にこなしていく。
ヒリヒリした競り合いが続くなか、均衡を破ったのは、またしてもセットプレーだった。
18分、キッカーはアントワン・グリーズマンで、飛び込んだのはラファエル・バラン。準々決勝のウルグアイ戦を想起させるシーンは、相手のオウンゴールを誘発する。準決勝のベルギー戦でも決勝点を導いたセットプレーは、今大会のフランスの最大の武器だった。