ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
フランス代表の黄金時代、始まる――。
クロアチアに勝った“ディテール”とは?
posted2018/07/16 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
ロシアW杯で最後のホイッスルが、モスクワのルジニキ・スタジアムに鳴り響いた。青を基調としたユニフォームが爆発的な歓喜に包まれ、赤と白のユニフォームに深い絶望が襲いかかる。美しくも残酷なコントラストが、ピッチ上に描かれていく。
2018年7月15日、クロアチアが今大会31か国目の敗者となり、フランスが世界でたった1カ国の勝者となった。20年周期で新たな優勝国が誕生するサイクルに歯止めをかけ、フランスは1998年以来2度目の世界チャンピオンとなったのである。
W杯のファイナルは、手堅い試合になることが少なくない。過去3大会はいずれも延長戦までもつれており、2006年はPK戦に勝敗が委ねられ、'10年と'14年は1対0のスコアで世界王者が決まった。両チームが互いにゴールを奪い、どちらかが2点以上取ったうえで90分以内に決着がついたゲームとなると、'86年のアルゼンチン対旧西ドイツ戦の3対2までさかのぼらなければならない。
今回は、違った。
勝敗を分けたのは「線の太さ」である。
昨年10月に就任したばかりのダリッチ監督。
クロアチアを率いるズラトコ・ダリッチは、'14年のブラジルW杯以降で3人目の監督である。
ニコ・コバチ、アンテ・チャチッチ、そしてダリッチと自国の人材が指揮官を務めてきたものの、ロシアW杯を託された51歳の就任は昨年10月だ。W杯前に采配をふるったのは、3つの公式戦と4つのテストマッチに限られる。
フランスは対照的だ。'12年の欧州選手権後に着任したディディエ・デシャンのもとで世代交代をはかり、ブラジルW杯8強、'16年の欧州選手権準優勝と実績を積み上げてきた。
25歳以下の選手がスタメンの6人を占めるチームでも、個人の経験値は心細いものではない。
クロアチアに比べれば、チームの強化という線は明らかに太い。