酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
フル出場すれば100%で本塁打王!
「おかわりさん」中村剛也の突出度。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/05/16 08:00
「ボールがピンポン玉のように飛んでいく」という表現は、中村剛也にこそふさわしい。彼のホームラン率は群を抜いている。
本塁打がでにくい環境では、1本の価値が上がる。
シーズン本塁打の場合、数式はこうなる。
(そのシーズンの選手の本塁打数×0.0247)÷そのシーズンのリーグ本塁打率
本塁打率は本塁打÷打数で割り出せる。0.0247は1936年から2016年までのNPBの通算本塁打率。
つまり、毎年異なる本塁打が出る環境を補正した数値で、同じ環境の中で他の選手に比べてどれほど突出していたかを示す数字である。これで、歴代のシーズン本塁打のTBAを出してみた。20位まで。
(数字は年、本塁打数、TBAの順)
1 中村剛也 2011年 48本 74.0
2 大下 弘 1946年 20本 66.9
3 中西 太 1953年 36本 65.8
4 中西 太 1955年 35本 63.5
5 バレンティン 2013年 60本 60.1
6 青田 昇 1948年 25本 59.8
7 川上哲治 1948年 25本 59.8
8 中西 太 1956年 29本 59.5
9 野村克也 1962年 44本 55.9
10中西 太 1954年 31本 52.8
11王 貞治 1964年 55本 52.4
12王 貞治 1966年 48本 52.2
13小鶴 誠 1950年 51本 52.0
14野村克也 1963年 52本 51.6
15山内一弘 1956年 25本 51.3
16王 貞治 1965年 42本 49.9
17野村克也 1957年 30本 49.7
18別当 薫 1950年 43本 49.4
19藤村富美男 1949年 46本 49.4
20豊田泰光 1953年 27本 49.3
ロッテ全体でも中村にかなわなかった2011年。
2011年は、NPBの加藤コミッショナーが主導してMLBと仕様が近く反発係数が低い「統一球」が導入された。
前年の本塁打率は、セ=0.0292、パ=0.0253だったが、2011年はセ=0.0174、パ=0.0160と急激に下がった。
この本塁打率は、1960年代前半以来の低さだった。
各打者の本塁打が激減する中、中村剛也は48本塁打を記録。2位はソフトバンク松田宣浩の25本。セの本塁打王はヤクルト、バレンティンの31本。
パの総本塁打数は454本、その1割強を中村が1人で打った。千葉ロッテのチーム本塁打は46本、チームの全打者が寄ってたかって中村にかなわなかった。
TBAで補正すると、中村の本塁打数は74.0になる。2013年にヤクルトのバレンティンが60本を打った時をはるかに上回る空前の数字だ。
この年、多くの選手が「球が重い、飛ばない」と言っている中で、中村は涼しい顔でアーチを次々と描いていたのだ。