酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
フル出場すれば100%で本塁打王!
「おかわりさん」中村剛也の突出度。
posted2017/05/16 08:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
常々あのニックネームがいかんな、と思っているのだ。「おかわり君」って、健康優良児みたいで軽すぎるでしょう。実際の風貌も、ゆるキャラみたいだから、ちっとも大打者っぽくない。
でも、埼玉西武ライオンズの中村剛也は、実は球史に残るホームラン打者なのだ。ホームランの密度、そして「他の選手が打たないときに打つ」能力で、中村剛也はずば抜けている。もっと賞賛されるべきだ。どん(机をたたく音)!
今回は、そのことをいくつかの数字で証明したい。
王、田淵時代とは球場の広さがまったく違う。
まずは、本塁打率。キャリアの本塁打数を打数で割った単純な数字。
42人いる300本塁打以上の選手のランキング。現役選手の数字は5/14試合前の時点。※は現役
(数字は左から本塁打、打数、本塁打率)
1 王 貞治 868 9250 0.0938
2 田淵幸一 474 5881 0.0806
3 A・カブレラ 357 4510 0.0792
4 T・ローズ 464 6274 0.0740
5 中村剛也 339 4591 0.0738 ※
6 松井秀喜 332 4572 0.0726
7 長池徳士 338 4872 0.0694
8 清原和博 525 7814 0.0672
9 落合博満 510 7627 0.0669
10山本浩二 536 8052 0.0666
世界のホームラン王、王貞治、そのライバルだった田淵幸一が1、2位。外国人選手2人を挟んで中村剛也は歴代5位なのだ。
現役では1位。巨人の阿部慎之助(380本塁打)は0.0558で22位、同じく村田修一(347本塁打)は0.0528で30位、広島の新井貴浩(311本塁打)は0.0405で42位だ。
王貞治らが活躍した昭和の時代、NPBの本拠地球場は両翼90m、中堅115mが標準的だった。王や田淵の記録はその時代につくられた。
1988年に両翼100m、中堅122mの東京ドームが開場してからNPBの本拠地球場は次々と改修、新築されて、今ではこれが標準サイズとなっている。MLBの球場とほぼ同じ大きさだ。
カブレラ、ローズ、中村剛也の記録は、球場が大型化してからのものなのだ。
それを加味すれば、中村剛也は日本人最強のホームランバッターと言えるかもしれない。