“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昌平高校・針谷岳晃と松本泰志。
知られざるJ内定コンビの涙、決意。
posted2017/01/27 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
青森山田の優勝で終わった高校サッカー選手権。
この物語では、華やかな埼玉スタジアムで行われた決勝の15日前、選手権が開幕する前のことに話を戻したい。
スタンドの無い、千葉県にある市原スポレクパークで、選手権に出場出来なかった2人の才能が、高校サッカー生活に幕を下ろした。
埼玉の昌平高校の3年生、針谷岳晃と松本泰志。
針谷はジュビロ磐田、松本はサンフレッチェ広島入団が内定し、早くもプロとしてそれぞれのキャンプに参加している。彼らが牽引した昌平は、古豪揃いの埼玉県サッカー界の中で新興勢力だった。
2007年にそれまで青森山田中サッカー部を率いていた藤島崇之監督が就任すると、メキメキと力をつけていき、2014年度には選手権初出場を果たした。翌年度にはプリンスリーグ関東に参戦。そして今年はインターハイ初出場を果たすと、インターハイ2回戦で前年度覇者の東福岡を3-2で下し、サプライズを起こす。勢いに乗ったチームはベスト4まで進出し、原動力となった針谷と松本がJリーグスカウトの目に留まったのだ。
“針のように細い”針谷に秘められた潜在能力。
卓越したテクニックとスルーパスを持つ針谷は磐田の名波浩監督に見初められた。シュートセンスとキープ力に秀でた松本は、広島開催のインターハイ後、そのまま広島の練習に参加。そこで森保一監督から高評価を勝ち取った。
一気に選手権での注目校に躍り出た昌平だったが、埼玉県予選準決勝の正智深谷戦で0-1の敗戦を喫し、全国の舞台に立つことは出来なかった。そのため彼らの存在はそこまで全国区にはならなかったが、個性的かつタレント性を持った選手なのは間違いない。
針谷はその名字のように、針のように細い。上手さ以上に、その細さに目が行ってしまい、実際にオファーに至らなかったJクラブもあった。そこは本人も認めているが、彼の中には自信と信念が宿っている。
「フィジカルで真っ向から行くと、勝てない。だからこそ相手の逆を取ったり、パスの精度を上げるなど、そこで勝負出来ると思います。ただ、僕は自分のことを“パサー”と言われるのは嫌なんです。“パサー”だと“守備が全く出来ない”という印象を受けてしまう」