“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昌平高校・針谷岳晃と松本泰志。
知られざるJ内定コンビの涙、決意。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/01/27 07:00
高い連動性を発揮した針谷(7番)と松本(10番)。まずはJリーグでの直接対決を目指して日々のトレーニングに励むことになる。
がむしゃらだった松本に加わったインテリジェンス。
松本は1年時から中心選手として周囲の期待を集めていたストライカーだった。下級生の頃はゴールへの欲求がプレーににじみ出ていて、がむしゃらにぐいぐいと前に行くイメージだったが、3年生になるとインテリジェンスが加わり、状況に応じて前への推進力を発揮できるようになった。
「対戦相手が徐々に自分に対策を練ってきて、むやみに飛び込んでこなくなった。カットインが得意なのですが、読まれている場合が多くて、そこでさらに機転を利かしたプレーが必要でした。ボールを受けるポジションが良ければ、自分が得意とする崩しの発想とフィニッシュの力を発揮出来るので、そこは意識するようになりました」
ポジショニングの意識をこれまで以上に高め、ボールを受ける前の動きでアドバンテージを取って仕掛けるプレーが増えたことが、インテリジェンスの高まりを象徴していた。
2人が共鳴した瞬間、鮮やかなゴールが生まれる。
タレント性を持ったこの2人が共鳴し合うことは、必然のことだった。
「動き出しが凄く早いので、見逃さないようにしている。タイシがいるからこそ、自分が出したいタイミングでパスを出すことが出来る」(針谷)
「僕はタケから多くのことを学んでいます。発想やポジショニングが良いので、たまに真似したりしています。試合中はタケが顔を上げた瞬間に動き出すことを意識しているので、動き出しの質を高めてくれる存在です」(松本)
昌平の試合を観に行くと、2人のホットラインでゴールを奪っていくシーンによく遭遇する。2人のイマジネーションが重なった瞬間、絶妙なタイミングでパスが通り、絶妙なトラップから鮮やかなシュートがゴールに吸い込まれる。それはまさに“最高のセッション”が生み出す、エンターテイメントそのものだった。
しかし、彼らの“高校最後のセッション”は、全国の檜舞台ではなかった。
最後の舞台は冒頭で述べたように、スタンドも無い市原スポレクパークだった。