“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昌平高校・針谷岳晃と松本泰志。
知られざるJ内定コンビの涙、決意。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/01/27 07:00
高い連動性を発揮した針谷(7番)と松本(10番)。まずはJリーグでの直接対決を目指して日々のトレーニングに励むことになる。
ミドルレンジでも的確に通せるインサイドキック。
確かに、彼のパスの精度は凄まじい。飄々とした表情で周りを冷静に見渡し、ノールックパスや相手の意表を突く縦パスをバシバシと通していく。さらに密集地帯でも正確なワンタッチパスで守備網をこじ開けていく。
特に光るのは“インサイドキックの強度”だ。膝下からのシャープなスイングで、20~30mの縦パスやスルーパスを出せる。ミドルシュート、FKも彼の武器の1つだ。そのキックの威力も決して“非力”ではない。少ないステップと膝下のスイングで、スピードに乗ったミドルパスや威力あるミドルシュートを放てるのだから、下半身や体幹はしっかりしていることが分かる。それを含めてパサーの印象を受けるのは、さもありなんである。
だが、彼のプレーをよく見てみると、パスセンス以上に“予測と判断の早さ”が目につく。相手と味方が今どこにいて、かつ何をしようとしているのか。周りの情報を察知して、的確な判断の下でパスを繰り出している。
予測と判断の早さがインターセプト数の多さに直結。
そして、インターセプト数の多さも針谷の特徴である。「インターセプトは目線と身体の向きで読んで、反応しています」と語るように、予測と判断の早さは相手がボールを持っていても発揮される。ボールホルダーやパスを受けようとする選手の動きを読んで、パスコースを素早く遮断する。
この時も下半身と体幹がしっかりしているから、スムーズに足を出せて、相手のパスを引っ掛けられる。飛び込むタイミング、足を出すタイミングは絶妙で、彼のパスカットは守備時にも非常に大きな存在感を発揮している。
「守備も攻撃も、相手を読んでやる。サッカーをやっていて、一番楽しいなと思うのは駆け引きですから。ボールが無いときはよく顔を振って、周りの状況を読み取る。すべては何秒前の暗記に懸かっていますから、そこをもっと鍛えて、360度見られるようになりたい」
自分に対する高度な欲求と、“守備が出来ないパサー”のイメージを持たれたくないという確固たる矜持が、3年間での成長の起爆剤となった。