“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
今季5度目の対戦は歴史的激闘に!
市船vs.流経柏の千葉決勝戦の壮絶。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/11/21 19:00
伝統の堅守に、変幻自在の戦術変更が絡む今年の市船。ハイレベルな決勝戦は、そのまま全国大会トップレベルとなった。
圧倒的なカウンタースピードにスタンドがどよめく。
31分にFKを競ったボールを拾った菊池が、鮮やかな振り向き様のループシュートを沈め、試合を振り出しに戻した。
32分には市船CB杉岡がバイタルエリアまで侵入して突破を試みるが、これを挟み込んだのは流経大柏MF本田憲弥とMF菊池だった。激しいプレスでボールを奪うと、素早く右サイドのFW古谷に繋ぎ、古谷はそのまま60m近くをドリブルで独走してセンタリング。ファーサイドに届いたボールに飛び込んだのは、ボールを奪った菊池。菊池のダイビングヘッドはGK長谷川に阻まれたが、圧倒的なカウンタースピードにスタンドは大きくどよめいた。
息も付かせぬ緊迫のゲームは、1-1で迎えた後半開始早々に動く。
44分(40分ハーフ)、市船の左CKが右に流れると、ボールを拾った金子が正確なクロスを送り込み、これをMF太田貴也がヘッドで合わせ、ゴールに押し込む。
「リードしてもここから簡単には勝たしてくれないだろうなと思った」(原)
ここから再び流経大柏の圧力が強くなって行く。
だが、原と杉岡のCBコンビはほとんど空中戦で競り負けなかった。正確に弾き返し、それを金子、高、阿久津が巧みに拾って、サイドに展開してカウンターを仕掛ける。セカンドを拾えなくても、バイタルエリアで自由を与えない。市船の守備の集中力は最後まで切れなかった。鬼気迫る赤の猛攻は最後まで続いたが、最後まで青の壁は崩れなかった。
今季の成績は、市船の3勝1敗1分けに。
タイムアップのホイッスルが鳴り響くと、ピッチには喜びを爆発させる青と、がっくりと崩れ落ちる赤のコントラストが描かれた。
市船 2-1 流経柏
かくして、今年の青と赤の激戦譜は幕を閉じた。
今季、ここまでの成績は3勝1敗1分けと市船が大きく勝ち越す結果となったが、すべて1点差の激戦で、勝敗は紙一重だったことは忘れてはならない。
そして、何より印象的だったのが、試合後の朝岡監督の目に浮かび上がった涙だ。
この涙はライバルに勝利し、全国のキップを手にした喜びはもちろんだが、「千葉県予選2連覇」を果たした喜びも相当大きかったことを表していたのだ。