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今季5度目の対戦は歴史的激闘に!
市船vs.流経柏の千葉決勝戦の壮絶。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/11/21 19:00
伝統の堅守に、変幻自在の戦術変更が絡む今年の市船。ハイレベルな決勝戦は、そのまま全国大会トップレベルとなった。
お互いの強さを十二分に知り尽くす、千葉の両雄。
対する市船は、ガンバ大阪入団内定のMF高宇洋、湘南ベルマーレ入団内定のCB杉岡大暉、アルビレックス新潟入団内定のCB原輝綺の3人のJリーグクラブ内定選手が軸となり、「変化に対応出来るサッカー」を熟成させてきた。
「ウチは3年生が軸となって、相手の変化をピッチ上で感じ取って対応出来るサッカーを目指す。特に原と杉岡、ボランチの高が中心となって全体をコントロールして、ビルドアップの精度や中盤の攻防、バイタルエリアの崩しなどで攻撃の厚みを出していくことを意識しています」
朝岡隆蔵監督は、柱となる選手がいる強みを最大限に活かし、組織として崩れないサッカーを入念に作り上げてきた。
「ウチと流通経済大柏はもう何回もやっているから、大体自分達の立ち位置が分かっている。『この試合でこれくらい頑張ることが出来なかったら、市立船橋に勝てない』、『これくらいやらないと流通経済大柏に勝てない』とお互いが分かっている。だからこそ対戦するのは嫌なのですが、お互いの存在があるからこそ、伸びるとも思っています。なかでも、選手権予選での一戦がもっとも懸ける想いが強い試合だと思います。1年を通して常にこの戦いがお互いの頭の中にある。だからこそ、それまでにどんな結果を出していても、トレーニングをたくさん積んでいても、どこかで『こんなんじゃダメだ(勝てない)』と思い続けられるのだと思います」(朝岡監督)
インターハイで優勝をしても、リーグで勝っていても、最後の高校選手権出場を懸けた一戦で最高のパフォーマンスを出せなければ――両者のこの想いが、チームの成長に拍車をかけているのだ。
大学生相手に一歩も引かぬ戦いぶりを見せた流経柏。
決戦を前に、両チームの練習グラウンドに足を運んだ。
流経柏のグラウンドを訪れた日は、ちょうど流通経済大学との練習試合が行われていた。流通経済大のメンバーを見ると、4年生を抜いた1~3年生のメンバー構成ながら、来年のレギュラーメンバーと言える豪華な顔ぶれだった。
40分ハーフの真剣勝負は、凄まじいものだった。
キックオフとともに全力で牙を剥く大学生に対し、高校生達は一歩も引くこと無く、真っ向勝負を挑んでいた。スピードとフィジカルで上回る相手に対し、押し込まれながらも、機を見て仕掛けるカウンターでは全員で押し上がっていき、セットプレーから先制点を奪ってみせた。その後、同点に追いつかれるも、再びすぐに取り返し、前半は2-1のリードで折り返してみせた。
結局、後半に逆転を許し2-3で敗れはしたが、これまで積み上げて来た「前から押し切るサッカー」をやりきる姿勢は試合の最後まで崩さなかった。
「市船戦ではいつも通りの力を出す。それだけです。準備はできています」
キャプテンのMF関大和は、チーム全体の高ぶる気持ちを代表して、こうコメントしてくれた。