Jをめぐる冒険BACK NUMBER
森脇、柏木、阿部それぞれの喜び方。
浦和の9年ぶりのタイトルに思う事。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE.PHOTOS
posted2016/10/18 11:30
ルヴァンカップの決勝、埼玉スタジアムには5万人を超える観客がつめかけた。彼らが目撃したのは、伝説の始まりだったのだろうか。
2週間前の4-0大勝は、決していい兆候ではなかった。
2週間前のリーグ戦で浦和はG大阪を4-0と完膚なきまでに叩きのめしたが、ルヴァンカップ決勝を考えたとき、それは、決して良い兆候とは言えなかった。
敗れた側が敗因を洗い出し、修正を施してくるのは当然で、2試合続けて同じような内容・結果になるとは考えにくい。実際、浦和には嫌な過去がある。ナビスコカップ決勝に進んだ2013年、決勝の相手である柏レイソルに直前のリーグ戦で2-1と勝利したものの、決勝では返り討ちに遭って0-1で敗れたのだ。
やはりと言うべきか、決勝でのG大阪は2週間前とは別のチームだった。そして17分、アデミウソンにドリブル突破を許し、浦和は痛恨の失点を喫してしまう。
同点にしようと焦って攻め急ぎ、自滅する――。それが、これまでの浦和の敗戦によく見られる傾向だった。しかしこの日は、いつもと違った。
落ち着いた大人のチーム。それが、変わった浦和の正体だった。
負けている状態での戦い方を変えた柏木。
「負けている状態で、うちらが攻めに行き過ぎなかったことが大きかったかな。1点取れるんじゃないかなっていう自信があったし」
そう振り返ったのは、ボランチの柏木だ。焦ることなくゲームコントロールを心がけたプレーメーカーは、さらに続ける。
「いつもは急いでボールを奪われ、カウンターを食らうことが多かったから、タメを作ってみんなが上がる時間を作りながらやっていた。こういうところがチームとして成長したと思うし、個人的にもどんどん良くなっている」
我慢しながらゲームを進めていた76分、その柏木のコーナーキックに投入されたばかりの李忠成が頭で合わせて追いついた浦和は、延長戦の末に突入したPK戦で5人全員がしっかりと決め、溜まりに溜まった喜びを爆発させた。
表彰式が終わっておよそ30分後。G大阪の選手たちはすでに去り、浦和の選手たちによるペトロビッチ監督への感謝の言葉で溢れていたミックスゾーンで印象に残ったのは、阿部のこんな言葉だった。
「プレッシャーなんて、しょっちゅうですよ。レッズに来たときからプレッシャーは感じている」