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<独占インタビュー> イビチャ・オシムから日本へのメッセージ。~Rewrite the Rule~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/13 11:00
日本サッカーが進むべき道について。
――監督と選手の距離感は、日本でもヨーロッパでも同じでしょうか?
「日本のように、もともと監督と選手の間に距離がある国の方がコミュニケーションはとりやすい。日本社会を見ても、老人と若者の間にはモラルの面で距離がある。そうした社会の中で誰がどの位置を占めているかを理解することが重要だ。その上でチーム構築のカギとなる選手を見極める。誰がチームの支柱になっているのか。私がジェフを率いていた時は、当時21歳だった阿部勇樹をキャプテンにした。チーム内ではかなり下の年齢だったが、あえて才能のある若い人間を主将にすることで、チームがうまく機能すると考えたからだ」
――最後にうかがいます。今後、日本サッカーが進むべき道について。
「何度も言うが、他に頼らない日本独自のやり方だ。日本人はとても真面目で、自分たちだけで何かを成し遂げることができる。アメリカでもイタリアでもブラジルでもない、日本独自のスタイルでだ。そのための方法も経験も、あなた方にはあるではないか。サッカーは日々進化している。だからこそ、世界とともに生きていく。もし、日本がイングランドの位置にあったら、3年もあればイングランド以上のサッカーを実践するようになるだろう。だが、残念ながら、地理的な状況を変えることはできない。だからこそ、サッカーで何かを変えていくためには、日本独自の創意工夫と自主性を維持していかなければならない。模倣を続けても意味がないのだ。他人の考えでなく、あなた方日本人の考え方、アイディア。それを追求していくことで到達できることがあるだろう」
イビチャ・オシム IVICA OSIM 1941年5月6日、旧ユーゴスラビア生まれ。 '90年のイタリアW杯では、代表監督として母国をベスト8進出に導く。'03年にJリーグ・ジェフ市原の監督に就任すると、革新的なサッカーで注目を集めた。'06年から日本代表の監督を務めたが、'07年秋に脳梗塞で倒れ辞任。'09年に帰国後、ボスニアサッカーの国際大会復帰のために尽力した。