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<独占インタビュー> イビチャ・オシムから日本へのメッセージ。~Rewrite the Rule~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/01/13 11:00
「破壊は簡単だが、創造は難しい」
――あなたは日本で指揮を執っていた時も、そうして選手たちを刺激していたという印象があります。
「私がそうしたのは、日本人が創造的であるからだ。第二次大戦から日本は恐るべき早さで復興した。まず日常生活をノーマルな状態に戻し、国家もノーマルなものにした。そして国をとても豊かにした。他の国民にはない価値を、日本人が持っているからこそ成し得たことだ。何かを変えることの出来る人々が日本にはいる。ただ、日本には地理的なメリットがない。気候にも抗わなければならない。地震もあるし、台風も頻繁に訪れる。こうした状況を変えることはできない。だからこそ、少し先のことを常に考えておくべきだ。我々は明日があることを忘れがちだが、残念ながら明日は必ずやってくるのだから」
――日本サッカー、ひいては日本社会の改革のためには、本物のリーダーが必要なのではないでしょうか。
「本物のアイディアを持った人間を然るべき立場に就けて働かせることが重要だ。だが、決して急いではいけない。というのも、突出した人間や優れた人材は、すぐに潰されてしまうからだ。嫉妬が改革を妨げるということを忘れてはならない。創造的な人間には、邪魔することなく仕事をさせるべきだ」
――では、組織や社会を再構築するために必要なものとは何だと思いますか。
「破壊は簡単だが、創造は難しい。いったいどれだけの国が、再構築できたのか。ただ壊せばいいというものではない。守らなければならない価値があるし、伝統があるのならば、それは尊重すべきだ。そして、常に未来を考えなければならない。模倣を繰り返すのではなく、とにかく熟考する。理念を考え直さなければならないし、古くからある問題に向き合う必要もあるだろう。ここボスニアでも内戦があったが、それから約20年が過ぎた。以前のように生活するにはどうすればいいのか。それを模索し続けた20年だった。人間関係の対立を緩和し、共生の可能性を探ったのだ。ただ、再出発するための新たなモラル、新しい可能性を見いだすのは簡単ではない」
――サッカーの世界でもそれは同じでしょうか?
「サッカーは日常生活のイメージでもある。つまり、日常生活で起こることは、サッカーでも起こり得る。人生におけるあらゆる事象が、サッカーの世界でも縮図として現れる。人々の行動様式はサッカーの行動様式と同じだ。政治的、経済的にアグレッシブな人間は、サッカーにおいてもまたアグレッシブと言っていい。私が今、感じているのは豊かな人々の貧しい人々に対する攻撃である。金持ちのビッグクラブが多く存在する一方で、小さなクラブが世界最高になる可能性はない。例えばジェフ(ユナイテッド市原・千葉)が世界チャンピオンになることなど、神話の中の出来事だろう。その現実は見つめなければならない」