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<独占インタビュー> イビチャ・オシムから日本へのメッセージ。~Rewrite the Rule~
posted2016/01/13 11:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
日本を離れて早7年──。今、オシムの目に日本はどのように映るのか?
彼が待つサラエボに飛び、“我々が進むべき道”について聞いた。
――今回のテーマは「Rewrite the Rule」。つまり、組織や社会を変革するための哲学についてお聞きしたいと思います。あなたは2006年にサッカー日本代表の監督に就任した際、まず最初に「日本サッカーの日本化」を掲げました。そこにはどんな意図があったのでしょうか。
「日本化は実は簡単なことではなかった。言うは易しだが、実現は難しい。日本人の特長を見極め、それを引き出す。さらに他者と比較する。ブラジルやイングランドと比べたとき、いくつかの領域で違いが明らかになった」
――日本人の特長とは何なのでしょう?
「勤勉さの面で日本人は能力に恵まれている。それは能力であり特長だ。日本では誰もが勤勉に働いている。この特長を活かせないのであれば、とても残念だと言わざるを得ない。シュートがゴールの枠をそれるようなものだ。能力を維持し続けていれば、日本は常に野心的でいられる。そこをうまく利用すべきだ」
――あなたは試合でも練習でも「考えて走る」ことを強調しました。トレーニングの方法も多彩で、ある選手などは前夜から「明日はどんな練習をするのだろう?」とワクワクしていたといいます。
「まず選手にプレーする喜びを与える。プレーと喜びは別物だ。ただプレーする選手と喜びながらプレーする選手。すでにそこに違いがある。サッカーが難しい仕事のようになってしまったら、すべてが難しくなる。だが、演劇のように喜びに溢れていたら……。サッカーとは、観客にとってひとつの演劇である。選手はサポーターを喜ばせるためにプレーするものだ」
――しかしながら、日本はブラジルW杯以降、自信を失い、サッカー界が停滞しているように感じます。
「なぜ自信を失う必要があるのか。日本はすでに大きな進歩を遂げた。問題なのは、あなた方、日本人が目の前の結果ばかりにこだわりすぎていて、少し内向的になっていることだ。日本人の資質を活かしきっていない。もう少し自分たちに自信を持つべきだ。何かを行なうことに恐れを抱いているのではないか?『恐れることを、恐れるな。進め。』そう私は言いたい」