リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
クラシコ大敗を招いたベニテスの迷走。
レアルのフロント陣に迫る解任危機。
posted2015/11/25 11:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
D.Nakashima/AFLO
「第12節の試合がシーズンを決めることはない」
試合前日の記者会見でルイス・エンリケは正論を口にした。確かに、たとえそれがクラシコであっても、この時期の一試合が優勝の行方を直接左右することはない。
しかしベニテスはそうも言っていられなかった。
今回の頂上決戦を落とした場合、クビという形で“彼のシーズン”に大きな変化が訪れる可能性が生じていたからだ。
順位だけを見ると今季これまでのレアル・マドリーはそれほど悪くはない。が、結果に反して、ファンやメディアを納得させられるサッカーができているわけでもない。特に直近の2試合――1-0で勝利したCLのPSG戦と3-2で敗れたセビージャ戦――は内容が酷く、監督の手腕に懐疑的な視線を向ける人は増える一方……。
世界が注目するバルサ戦に際しては、何らかのてこ入れが行われることが期待されていた。
記者会見で「攻めにいく」とのみ答えたベニテス。
そこで注目されたのが中盤の構成だった。
具体的にはディフェンスラインの前にカゼミーロを置くのか否か。
「守備寄りの監督」という看板を背負ってやってきたベニテスは、マドリーでもやはりディフェンスのバランスを重視してきた。カゼミーロはそんな監督の方針を体現する選手として、9月末からのCLとリーガ8試合全てに先発出場してきた。
だが、彼には汚れ役に徹する献身性と守備力はあっても、攻撃の起点になり得る技術やゲームビジョンはない。
一方で、カゼミーロのレギュラーポジション獲得の要因のひとつであった「中盤の駒不足」は解消されている。故障中だったハメスが復帰し、昨季の主力クロース、モドリッチ、イスコも万全の状態だ。
記者会見で問われたベニテスは、ただ「攻めにいく」とだけ答え、ラインアップを予想させるヒントは一切与えなかった。