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フランスが抱えるテロ対策の難しさ。
現地スポーツ誌記者が解説する背景。
posted2015/11/25 10:50
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AP/AFLO
サッカージャーナリストの田村修一氏が、現地にいた『レキップ・マガジン』誌の記者ザビエ・バレ氏に電話インタビューを行いました。
バレ氏が、日本人には馴染みのないであろう事件の深い背景について解説します。
――フランスがイスラム国の標的にされた理由は何だったのか?
「理由はふたつある。ただこれは私の個人的な見解だ。第一の理由は、フランスの外交がちょっとおかしいことだ。というのもオランド大統領とファビウス外相は、はじめはシリアのバッシャール・アルアサド(現政権)を攻撃した。アメリカやロシアがやらなかったことだ。だがその後、オランドはイスラム国への攻撃を始めた。イスラム国とバッシャール・アルアサドは友好的な関係ではない。つまりフランスは、両者を敵に回してしまったわけだ。シリアでは誰もフランスに対しては友好的ではない。ちょっと奇妙な状況だが、それが今日のフランス外交の現状だ。
そして本当の問題は、シリアで外国人の兵士の数が増えていることだ。イスラム国(アラビア語で“ダーイシュ”)でさえフランス人の兵士が数多く参加しているということだ」
――フランス人とは、北アフリカ系のフランス人のことか?
「全員がイスラム教に帰依しているが、教育はフランスで受けていて、そのうちの半分はアラブ系や北アフリカ系の移民の人々だ。だが残りの半分は、古くからフランスに住むフランス人が改宗したものだ」
なぜフランスの若者はイスラム国へ向かうのか?
――「古くから住む」とは?
「私のように、何代にもわたってフランスに住んでいる人々だ。彼らがイスラム教に改宗したというのだ。数もとても多いらしい」
――興味深いが……どうしてなのか?
「恐らくは人生に希望を見いだせないのだろう。仕事もなく、情熱を注げる対象を求めている。そのうえイスラム国のリクルーターはとても巧妙だ。セクトの勧誘がそうであるように。若者たちはフランスを離れてイスラム国に加わるわけだが、彼らはときに妻や子供まで連れて移住するらしい。フランスではそうした家族のルポルタージュが数多くなされているが、それによると再びフランスに戻ってきている者たちも少なくないという。
彼らがフランスを離れるのは、インターネットなどで情報を得て、向こうでなら夢の生活を送れると考えるからだ。しかし戻ってきた者たちに話を聞くと、現実は決して甘くはない。なにしろ戦争状態にあるし、扱いも酷い。非人間的な行為も要求される。本当に恐ろしいばかりだが、それでもダーイシュに残っている者も多い。ダーイシュに関しては、よく噂に聞くのは、彼らのために戦士として戦っても、戦いを放棄したとたんに殺されてしまうというものだ。
問題は、革命やイスラムの大義を吹き込まれて戦っている者たちの大多数がフランスのパスポートを持っていることだ。彼らはフランス人のまま戦っているのだ」