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クラシコ大敗を招いたベニテスの迷走。
レアルのフロント陣に迫る解任危機。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byD.Nakashima/AFLO
posted2015/11/25 11:00
ラファエル・ベニテス監督は就任後初のクラシコで大敗。フロレンティーノ・ペレス会長は後日の会見で彼を擁護したが……。
蓋を開けると、見覚えのある布陣。
翌日、蓋を開けると、4-3-3の前2列に並んだのはクロース、モドリッチ、ハメスにベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド。
フォーメーションの違いこそあれ、アンチェロッティ時代のマドリーだった。
マルカ紙によると、試合の5日前、チームの重鎮であるセルヒオ・ラモス、マルセロ、C・ロナウドは監督の元に赴き、今季用いてきた守備重視の戦術を捨てて攻撃的にいくよう求めたそうだ。
それだけで自分を曲げるベニテスではないが、地元でのバルサ戦というプレッシャーもあったのだろう。フロレンティーノ・ペレス会長の意向を汲んだという見方もある。
いずれにせよ、安全策を好む監督がリスクをとり、大胆にいくべき立場のルイス・エンリケがリスクを避けて故障明けのメッシをベンチに残したのだから面白い。
しかし、結果的にはこれが失敗だった。
キックオフわずか1時間前のスタメン発表。
急拵えとなったマドリーには“システム”がなく、攻撃に際しても守備に際しても連携が欠けていた。
後にわかったことだが、セビージャに敗れた前節からの2週間、カゼミーロなしの中盤でいく可能性をベニテスはチームに全く示しておらず、この布陣を練習で試すこともしていなかったというから当然といえば当然だ。そればかりか、最後の最後まで逡巡していたのかもしれないが、一同に対しスターティングイレブンを発表したのはキックオフのわずか1時間前。
選ばれた11人の中には「自分の先発はない」と思い込んでいた者が、またベンチスタート組の中には「自分は先発」と信じていた者が複数いたという。
11分、ルイス・スアレスが最初のゴールを蹴り込むと同時に、バルサのオートマティズムとコンビネーションに対するマドリーの無力は明らかとなった。
今回のクラシコでは不調が続くC・ロナウドが最高のパートナーであるベンゼマの復帰を受けて大暴れすることが期待されたが、攻守において為す術なしではどうしょうもない。
観客もすぐさま反応し、当初ピケに対して吹いていた非難の指笛を我がチームの選手と、その不様なサッカーと、それを指示した監督と、その監督を選んだ会長に向け始めた。