スポーツのお値段BACK NUMBER
投資先として魅力的であるために。
Jクラブと欧州トップは競争相手だ。
posted2015/11/28 10:30
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph by
AFLO
4500万ユーロ(58億5000万円)
(中国・大連万達集団がアトレティコ・マドリーに出資した金額)
いま、スペインのサッカー界に中国マネーが流れこんでいることをご存じでしょうか。その傾向は今年、さらに顕著になっているようです。いくつかの事例をご紹介しましょう。
まずはアトレティコ・マドリー。チャイナデイリー紙によれば、「中国の不動産王」とも称される大連万達集団(ワンダ・グループ)が1月、アトレティコの株式の20%を4500万ユーロ(58億5000万円・1ユーロ=130円換算)で買いつけました。
デロイト社のレポート『Football Money League 2015』において2013-14シーズンの世界売上ベスト15に名を連ねるアトレティコに資本参加したワンダ・グループは、欧州のメジャーなサッカークラブに投資した最初の中国企業になったということです。
中国マネーの行き先はそうしたビッグクラブだけではありません。玩具や携帯ゲームを扱うラスター・グループは1億7800万ユーロ(231億4000万円)を投じて、エスパニョールの株の56%を取得。スペインのサッカークラブの株の過半数を獲得したのは、中国企業として初のケースとなりました。ラスターグループはさらに4500万ユーロ(58億5000万円)をクラブの債務削減、そしてチーム強化のために用意しているといいます。
中国企業が欧州市場に進出する足がかりとして。
実は、エスパニョールは財政難にあえいでいるにもかかわらず、複数の中国企業から投資の打診を受けていました。なぜかといえば、リーガ所属のクラブに対する投資は、中国企業が欧州市場において存在感を高める足掛かりになると、合理的な経営判断として考えられているからです。
ラスター・グループも、グローバル市場でのプレゼンスを確立すると同時に、玩具やゲームのみならずスポーツ業界へとビジネス範囲を拡大させるという長期的戦略から投資を実行に移しました。
こうして中国企業は、投資(株の取得)とスポンサーシップを通じて、スペインサッカー界における影響力を徐々に増してきており、リーガの実に16のクラブが中国マネーを受け入れているとも言われています。