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“浦和の”武藤も現在ブレイク中!
興梠と共通する、師と仰ぐ選手とは。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/06/04 11:20
“じゃない方”という嬉しくない言葉を跳ね返して知名度を上げてきた武藤雄樹。ロナウドという名前の意味を塗り替えたC・ロナウドのようになれるか。
“可変システム”に適応できた武藤の、ある特徴。
浦和を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督のサッカーには、“特殊”や“難解”といった言葉が付いて回る。それは、マイボール時と相手ボール時に選手の配置が変わる“可変システム”であることが理由の1つだ。
特に武藤が務めるシャドーは、マイボール時にはオフェンシブハーフであり、ストライカーであることが求められる一方で、相手ボールになれば前線でのプレスに参加すると同時に、ブロックを作る局面ではダブルボランチと同じラインまで下がってのサイドの守備が要求される。これだけをとっても、いかにマルチな能力が求められるポジションであるかが浮かんでくる。それはまさに、ここ数年間に浦和へ移籍してきた選手たちが苦労した要因だ。
しかし武藤にとっては、それが自身の持つ特徴とシンクロした。
「ボールを受ける動きという意味で、ディフェンスラインと中盤の間でボールを引き出すことは、昔からやれると思っていたんです。ただ、仙台ではそれが要求される場面は多くなかったですからね。浦和のシャドーというのは、その長所を生かせるポジションだと思っています。トップを飛び越えて相手の裏に出ていくことも、自分の運動量という特徴が生きている部分です」
興梠とともに、ボールの引き出し役として大きく機能。
実際に武藤のプレーを気をつけて見てみると、オフザボールの時に休みなく相手DFと駆け引きをしていることがわかる。それが相手のマークを外すことにつながり、後方でポゼッションしている味方から有効な縦パスを引き出すことを可能にするのだ。
その、オフザボールでの動きでボールを引き出すという要素を考える時、共通点を持つのがペトロヴィッチ監督の浦和に加入して大きな成功を収めている興梠慎三だ。興梠もまた、1トップの位置で自在にボールを引き出しつつ、攻撃の最終局面ではゴール前に進出して決定的な仕事をする。今の浦和が持つ、守備的に構えた相手をものともしない攻撃力には、ピッチ上の段差のある2つの場所に攻撃のスイッチが存在することが寄与している。