野球クロスロードBACK NUMBER
交流戦2年ぶり優勝を果たした巨人。
常勝軍団が覚醒した“原のタクト”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/06/24 10:30
捕手、代打、新戦力と次々積極采配に打って出た原辰徳監督。交流戦優勝、そしてセ・リーグでも早くも独走態勢。「新」巨人は昨年逃した日本一を本気で狙っている。
主砲の村田に対しても、迷うことなく代打・高橋由伸。
無死二塁のチャンスで、「枢軸」と評価する4番の村田に高橋由伸を代打に送ったのだ。
「あそこは由伸に分があると判断しました」と原監督は意図を述べたが、結果は空振りの三振。しかし、4回無死一、二塁の場面でゲッツーに倒れた村田に対して、「ああいうところでのダブルプレーで勢いを遮断したね」と語っていただけに、高橋を代打に指名した狙いも妥当と言えば妥当だったのかもしれない。
結果の有無を問わず、原監督は交流戦で信念を貫き通し、そして優勝を手繰り寄せた。
采配の真意。それは、優勝後の監督インタビューで垣間見ることができた。
「今年は接戦を勝利することができました。それは価値があると思いますが、チームとしては70%。まだできると思います」
つまり、指揮官は試していたのだ。
周囲は明確な根拠もなく「巨人の戦力は厚い」と言う。だが、それはあくまで個人の能力であって結果と比例するわけではない。
ならば、過程で失敗があろうとも実戦で底上げを図ろう――。そんな目論見が原監督にはあったのではないだろうか。
苦い経験を糧に「70%」までアップしたチーム力。
現に、「悔しく、歯がゆい思いをした」と思いを吐露した村田は、翌日の試合で4番の役割を果たしチームを優勝へと導いた。
スタメンマスクを被りながら未熟さを痛感した小林も、「こういう(優勝がかかった)試合に出させてもらえることに感謝しないといけませんけど、ゲームの流れ的な部分をもっと見るとか、反省点をたくさん知れたことはよかったです」と苦い経験を糧にしている。
原監督の多様な采配によってチーム力を「70%」まで引き上げることに成功し、セ・リーグでは2位の広島に2.5ゲーム差をつけ首位に立っている。
交流戦初制覇を遂げた2012年は日本一。縁起がいいではないか。
残り30%。28日から再開されるレギュラーシーズンでその力を補完することができれば、巨人が至上命題とするタイトルも必然的に手にできるはずである。