野球クロスロードBACK NUMBER
交流戦2年ぶり優勝を果たした巨人。
常勝軍団が覚醒した“原のタクト”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/06/24 10:30
捕手、代打、新戦力と次々積極采配に打って出た原辰徳監督。交流戦優勝、そしてセ・リーグでも早くも独走態勢。「新」巨人は昨年逃した日本一を本気で狙っている。
6月に入って、さらに積極性を増した攻めのタクト。
6月は、特に積極的だった。
11日の日本ハム戦、2対1で迎えた延長10回の2死一塁の場面で山口鉄也から香月良太にスイッチ。不動のセットアッパーを途中降板させたことで周囲はざわついたが、「今日に関しては(香月のほうが)勝つ確率が高いと思った」と、原監督に迷いはなかった。香月は代打の鵜久森淳志をショートフライに打ち取り起用に応えた。
ただその「大胆さ」、「積極性」がすべてプラスに働いたわけではない。
翌日の日本ハム戦は11対2と大差で勝利したものの、先発の笠原将生が安定せず、3回途中から継投した青木高広も失点。4回からマウンドに上がった今村信貴も2回1失点と精彩を欠いた。先手、先手と動いた結果が奏功しなかったわけだが、指揮官は「いろんな意味で躍動感があるゲームでした」と失敗すらしっかりと受け止めた。
そんな攻めのタクトは、「勝てば優勝」の大一番でも振るわれた。
優勝のかかる一戦で、新人の小林を先発マスクに選んだ。
21日のソフトバンクとの試合、勝利数、防御率ともにリーグ1位の菅野智之を交流戦の優勝投手に任命しながら、先発マスクに選んだのはレギュラーの阿部慎之助ではなくルーキーの小林誠司だった。
「慎之助のコンディションがベストではなかった、ということですね」と原監督は理由を説明したが、小林は5月14日のヤクルト戦以来のスタメンである。間隔が空いているだけに不安要素がないかと言えば嘘になる。
事実、若きバッテリーは相手打線に捕まった。4回、李大浩の本塁打で先制を許すと、1死二塁から吉村裕基に初球のストレートをセンターに運ばれ不用意な失点を与えた。これには、小林、菅野ともに「あのストレートは簡単に行きすぎた」と悔やみ、結果的にそれは、ダメ押しの3点目となる8回のワイルドピッチにも少なからず悪影響を及ぼしてしまった。
「後半で1対2ならそういうこともあるでしょう」。指揮官は「想定内だ」と言わんばかりに、ひるむことなく9回にも動いた。