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実力の東都が名門の六大学を駆逐!?
ドラフトで見る大学リーグの勢力争い。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/06/26 10:31
2000年のドラフト会議で巨人を逆指名し1位で入団した阿部慎之助。東都リーグの中央大時代は、チームを2部から1部に昇格させ、2000年夏にはシドニー五輪代表にも選出されるなどアマ球界No.1捕手だった。
重視するのは名よりも実──実践的な巨人の新人戦略。
私が意外だったのが巨人である。
ある時期から巨人がドラフト巧者になったのは確実だが、巨人の歴史は東京六大学リーグの歴史と言ってもいいくらい重なる部分が多い。たとえば、野球殿堂入りしている巨人OB(競技者表彰)で東京六大学リーグ出身者は数多い。主な選手だけ挙げると――。
中島治康(早大)、藤本定義(早大)、中上(藤本)英雄(明大)、水原茂(慶大)、三原脩(早大)、長嶋茂雄(立大)、広岡達朗(早大)
野球史から外せないOBがズラッと並ぶ。これほど大物OBを擁する球団が、過去5年間、同リーグ出身者を1人しか獲得していないのである。その代わり東都出身者は澤村、高木京、阿部、村田、長野、亀井、松本哲也(専大)、古城茂幸(国士舘大)、矢野謙次(国学院大)など数多い。東京六大学出身者が越智大祐(早大)、江柄子裕樹(明大)、高橋由伸(慶大)の3人しかいないのに、である。こういう実践的な考え方が私は好きだ。
地方私大の新興リーグが2大老舗リーグの牙城に迫る。
東都勢の真骨頂は東京六大学リーグに対する強烈な反発心である。
「早慶」に代表される六大学ブランドに対する反発心、そして、週末開催の東京六大学リーグに対して、東都は平日火曜からの開催(2部リーグは月曜からゴルフ場も兼ねる神宮第二球場での開催)。そういう諸々のマイナス要素を力に転換しているところが東都大学リーグの魅力と言っていい。
「東都」がブランドになれば、それを追い落とそうとする新興勢力からの突き上げがある。今年の大学選手権決勝では関甲新大学リーグ代表の上武大が東都の覇者、亜細亜大を6対5で下し、リーグ初優勝を遂げた。こういう老舗vs.新興の闘争がもっといろいろなところで勃発すれば大学野球はもっと面白くなる。