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実力の東都が名門の六大学を駆逐!?
ドラフトで見る大学リーグの勢力争い。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/06/26 10:31
2000年のドラフト会議で巨人を逆指名し1位で入団した阿部慎之助。東都リーグの中央大時代は、チームを2部から1部に昇格させ、2000年夏にはシドニー五輪代表にも選出されるなどアマ球界No.1捕手だった。
ドラフト上位には六大学出身選手が集中する逆転現象が。
これだけ東都出身者がプロ野球界で活躍していれば、ドラフトでも東都勢が優勢なように思えるが必ずしもそうではない。'08年以降の東都と東京六大学、パ・リーグとセ・リーグという対比で、指名傾向を見ていこう。
●'08年
東都出身……セ3人、パ7人
六大学出身…セ5人、パ0人
●'09年
東都出身……セ6人、パ4人
六大学出身…セ3人、パ3人
●'10年
東都出身……セ3人、パ6人
六大学出身…セ4人、パ2人
●'11年
東都出身……セ1人、パ7人
六大学出身…セ4人、パ1人
●'12年
東都出身……セ6人、パ4人
六大学出身…セ4人、パ0人
※合計
東都出身……セ19人、パ28人=47人
六大学出身…セ20人、パ6人=26人
数の上では東都勢が六大学勢を引き離しているが、ドラフト1、2位の上位指名に目を向けると、東都47人中15人(上位指名率32パーセント)、六大学26人中13人(上位指名率50パーセント)と逆転する。数で報いることができなければ順位で報いてやるというプロ野球側の名門リーグに対する配慮がうかがえる。
セ3球団の“六大学志向”が育成に苦慮する要因に!?
セとパの指名傾向もはっきり色分けできる。東都勢に積極的に向かっているのはパで、反対に六大学勢にはセが積極的である。セ・リーグの名門意識と東京六大学の名門意識がカチッと同調してこういう結果になっているのだと思う。
どの球団が東都に向かい、どの球団が東京六大学に向かっているのかも興味がある。
●東都出身選手獲得数
ロッテ7人、ヤクルト、オリックス、日本ハム各5人、中日、巨人、楽天、西武各4人、広島、ソフトバンク各3人、DeNA 2人、阪神1人
●東京六大学出身選手獲得数
広島7人、DeNA 5人、阪神4人、中日3人、西武、楽天各2人、巨人、日本ハム、ロッテ各1人
「東都には向かうが六大学には熱心ではない」というのがロッテ、ヤクルト、オリックス、日本ハム、巨人、ソフトバンクで、「両リーグの選手をバランスよく指名する」というのが中日、楽天、西武、「六大学には向かうが東都には熱心ではない」というのが広島、DeNA、阪神である。育成に苦慮するセ・リーグ3球団が東京六大学勢に向かっている現実は非常に興味深い。
ドラフトで指名するのは大学生だけではなく、高校生を交えた「将来性と即戦力」のバランスも重要なので、東都か六大学か、という比較は普遍性がなく説得力もないが、これほど両リーグOBの活躍度に差がありながら、それには目を留めず東京六大学出身者を指名し続ける広島、DeNA、阪神の指名戦略はピントがボケていると言わざるを得ない。