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五輪競技に多い奇妙なルール改正。
“選手の視点”が希薄すぎるのでは? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byHiroyuki Nakamura

posted2011/09/27 10:30

五輪競技に多い奇妙なルール改正。“選手の視点”が希薄すぎるのでは?<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

「ルールを変えるべきとは言わない。ただ集中してブロックに最後まで足を残すことを学んだんだ」と教訓を語ったボルト。一方で国際陸連は、ルール変更の意志がないことを明らかにした。ロンドン五輪でも同一のルールで競技が行われる

 この夏、水泳、柔道、陸上、レスリングなど、各競技の世界選手権が行なわれてきた。

 それを見る中で、あらためて気になったことがある。

 ルールの問題だ。

 陸上の世界選手権で話題となったひとつに、陸上100m決勝でのウサイン・ボルトの失格がある。

 陸上短距離は、かつての「フライングを2度した選手は失格」から2003年に「2回目にフライングをした選手は失格」と変わった。そして昨年からは「一度のフライングで失格」へと変更された。

 この新ルールのもとで初めて行なわれた世界選手権の100mの決勝で、ボルトがフライングを犯し、失格となったのだ。

 ボルト自身は自分の責任としたが、他の選手から意見が続出した。このレースで銀メダルのウォルター・ディックス、銅メダルを獲得したキム・コリンズも、そろってルールへの疑問を口にした。

ルールの変更は選手のためではなくテレビ局への配慮か。

 決められたルールはすべての選手に平等であるのに、なぜ彼らは現行のルールを問題視したか。

 根本には「選手の視点がそこにあるのか」という不満がある。

 そもそもフライングのルールが変更されてきた背景にあるのは何か。選手が意図的にフライングし、駆け引きに利用されていたという点もあるが、もう一つ大きな理由はテレビ中継との兼ね合いにある。フライングで競技時間が延びれば中継に影響する。競技時間を読むことができるように、フライングを制限してきたということだ。

 同じ理由でのルール変更は陸上にかぎらない。

 例えば、バレーボールやバドミントンでラリーポイント制が導入されたのも、試合時間を読みやすくすること、つまり中継しやすくすることが主因だった。

 つまり、放映権料などビジネス面への配慮がそこにはある。

【次ページ】 柔道世界選手権でもビジネス優先のルール改定が。

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