オリンピックへの道BACK NUMBER
五輪競技に多い奇妙なルール改正。
“選手の視点”が希薄すぎるのでは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2011/09/27 10:30
「ルールを変えるべきとは言わない。ただ集中してブロックに最後まで足を残すことを学んだんだ」と教訓を語ったボルト。一方で国際陸連は、ルール変更の意志がないことを明らかにした。ロンドン五輪でも同一のルールで競技が行われる
柔道世界選手権でもビジネス優先のルール改定が。
柔道の世界選手権では、こんなことがあった。
大会期間中、1枚のリリースがプレスルームで配られたのだ。国際柔道連盟からのもので、今後柔道の地位をさらに引き上げ、メジャーにするための運動に乗り出していくという趣旨だった。
柔道で近年に行なわれてきた変更は、その趣旨に沿ったものである。
柔道衣の青白の区別もそうだし、ポイントとランキング制の導入、大会の明確な格付け、それらは有力選手を国際大会に出場させることで放送権料やスポンサー収入の増加などを目的にしたといわれる。
だがそういった活動が選手には弊害となっている面もある。
選手は導入前よりも数多くの大会への参加が義務づけられることになったが、柔道は減量のある競技である。減量にあてる期間が長くなり、健康面での不安を訴える選手もいる。また、怪我のリスクも増えるし、ベテランにとっては長く第一線で活躍することが難しくもなる。
滑走直前の選手を待たせても中継に配慮したモーグルW杯。
繰り返しになるが、いくつか例にあげたルール変更は、決して選手からの注文ではない。
そういえば以前、アメリカでモーグルのワールドカップを見たときの違和感も、根は同じだ。モーグルは一人ずつ滑り、ジャッジが採点する競技だ。次の出番の選手はスタートに備えて待機している。
ところが滑り終えたばかりの選手のテレビインタビューが、ゴールエリアで突然始まることがあったのだ。何人かの選手ではあったが、当然、競技は一時中断される。次の選手は待たされることになる。強烈な違和感だった。