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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「日本ではやっぱり“苦しい”が勝っていた」35歳菅野智之がアメリカで“笑顔”のワケ…MLBで豪速球がない“オールドルーキー”が成功する絶対条件
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byJulio Aguilar/Getty Image
posted2025/03/24 17:01

昨季は15勝を挙げるなど、巨人のエースとして日本球界をリードしてきた菅野智之(35歳)。悲願のメジャー挑戦が始まる
「投球の方法を知った経験豊富なピッチャーだ。制球が落ち着いているときは強豪チームが相手でもいい投球ができる。ただ、球威には欠けるため、いわゆる“margin of error(ミスが許される範囲)”は少なく、長いイニングは厳しいかもしれない」
ナ・リーグの某スカウトが授けてくれたそんな分析は、実にわかりやすくメジャーリーガーとしての菅野の長所と短所を示しているのだろう。投げたい場所にボールが決まっている間はいいが、球速、球威は標準程度ゆえに失投は捉えられる可能性が高い。チザムの本塁打の時のように、パワフルなメジャーの打者に菅野が驚くような形で長打にされるケースも出てくるかもしれない。
だとすれば、鍵はいかにミスを少なくするか。そして的を絞られた場合にどう適応するか。長いシーズンを通じてそれが可能かどうかに、菅野のメジャーでの成功が委ねられてきそうだ。
「毎日、球場に来るのが楽しい」
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ここで心強いのは、聡明な菅野本人も自身の置かれた今の状況に気づいており、それでもヤンキース戦後も「しっかり修正すれば抑えられる」と自信は変わらなかったこと。そして、NPBよりも一段ハイレベルなリーグに来て、苦しむことがあっても、依然としてそれを楽しめるハートの強さを保っていることだ。
「毎日、球場に来るのが楽しいっていう感覚は今でもあります。日本にいるとやっぱ苦しいが勝っていました。もちろんシーズン始まって、こういう試合になればやっぱ苦しいと思うのでしょう。でも、その中でも新しいことに挑戦し、毎日勉強だっていうふうに自分に言いきかせて、やれていること自体が素晴らしいことだと思う。感謝しなきゃいけないことであり、その気持ちは忘れずに一年間完走したいなと思います」
菅野のメジャーデビューは27日からトロントで行われる開幕シリーズ4連戦の3、4戦目か、31日のホーム開幕戦のいずれかが有力。生き馬の目を抜くようなメジャーリーグでは、いいことも、そうではないこともあるだろう。そんな中でも楽しむ気持ちと感謝の思いを忘れずに疾走できれば、活路はきっと開ける。懐の深さを感じさせるベテランルーキーの行く手に、楽しみな初陣の舞台が間近に迫っている。
〈つづき→レッドソックス吉田正尚編も見る〉
