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「日本ではやっぱり“苦しい”が勝っていた」35歳菅野智之がアメリカで“笑顔”のワケ…MLBで豪速球がない“オールドルーキー”が成功する絶対条件
posted2025/03/24 17:01

昨季は15勝を挙げるなど、巨人のエースとして日本球界をリードしてきた菅野智之(35歳)。悲願のメジャー挑戦が始まる
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Julio Aguilar/Getty Image
ドジャースの大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、カブスの今永昇太、鈴木誠也と多くの日本人選手たちが凱旋したMLB開幕シリーズ。その裏で、他の日本人MLB選手たちも着々と新しいシーズンへの準備を進めている。現地記者が見た、フロリダでの様子とは?【NumberWebレポート第1回オリオールズ菅野智之編/レッドソックス吉田正尚編も公開中】
昨季のア・リーグMVP、アーロン・ジャッジのバットが綺麗に空を切った。
3月20日、フロリダ州サラソタで行われたヤンキース対オリオールズのオープン戦でのこと。オリオールズ先発の菅野智之は5回に迎えたジャッジとの3度目の対戦で、2ストライク後に粘られても根負けはしなかった。最後は8球目の89マイルのカッターを低めに落とし、見事に空振り三振を奪ってみせた。
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「やっぱり雰囲気はあって、“ジャッジと対戦しているな”って気はしました。(1、2打席目に与えた)2つの四球は自分自身、ちょっと残念でした。(ただ、)最後はなんとかやり返せてよかったです」
敵地でのゲームでもジャッジ、ベリンジャーといった主力を起用してきたヤンキース。「話が違う。今日は来ないって聞いていたんですけど(笑)」と笑わせた菅野だが、メジャー通算315本塁打のスラッガーから奪った三振には手応えがあったに違いない。このシーンに象徴されるように、今オフにオリオールズに1年1300万ドルの新契約で入団した菅野はまずは順調なスタートを切っている。
大谷や朗希のような豪速球はない
最初の4度のオープン戦登板ではベテランらしい落ち着いたマウンドさばきをみせ、合計10回1/3を連続無失点。速球、カッター、スプリット、スイーパー、カーブといった多彩な球種を巧みにコーナーに投げ分け、相手打者のタイミングを外してきた。大谷翔平や佐々木朗希のような相手打者を圧倒する豪速球こそないものの、その制球力と投球術は周囲を感心させるに十分だった。
「僕は90マイル後半のストレートを投げられるわけじゃない。改めてコンビネーションの大切さというか、そういうのを再認識できたと思います」
菅野本人もそう述べていたが、とにかく速球派が全盛の現代のメジャーリーグでその投球は異彩を放っている。また、マウンド上のパフォーマンスで感心させるだけでなく、チーム内での評判がすこぶる良いのもここまでの菅野の特徴だ。