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「日本ではやっぱり“苦しい”が勝っていた」35歳菅野智之がアメリカで“笑顔”のワケ…MLBで豪速球がない“オールドルーキー”が成功する絶対条件 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byJulio Aguilar/Getty Image

posted2025/03/24 17:01

「日本ではやっぱり“苦しい”が勝っていた」35歳菅野智之がアメリカで“笑顔”のワケ…MLBで豪速球がない“オールドルーキー”が成功する絶対条件<Number Web> photograph by Julio Aguilar/Getty Image

昨季は15勝を挙げるなど、巨人のエースとして日本球界をリードしてきた菅野智之(35歳)。悲願のメジャー挑戦が始まる

「先日、(菅野と)ゴルフに行ったんだけど、本当に面白く、クールな人なんだ」

 そう語った際のアドリー・ラッチマン捕手の嬉しそうな笑顔も印象的だった。ラッチマンは2019年のドラフト1巡目全体1位、いわゆる“いの一番”でオリオールズに入団し、期待通りにフランチャイズ・プレーヤーに育った27歳のスター選手である。いつも冷静沈着な印象があるが、過去2年連続でオールスターに選ばれた正捕手も菅野の話になるとスマイルが抑えきれない様子なのだ。

「言葉の壁があるから、(アメリカで)そういう(深い)つながりを作るのは難しいはずなのに。でも彼は本当に地に足のついた人間で、毎日一生懸命に練習しているように見える。新しい環境に慣れ、彼が自分のやりたいことをやっているのを見るのは私にとっても本当に素晴らしいことだ」

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 チームNo.1のスター選手にここまで言わせるのだから、35歳の“オールドルーキー”の滑り出しは順調なのだろう。

 ヤンキース戦の際にはニューヨークポストの著名記者、ジョン・ヘイマンが「日本人のいい投手がいるらしいね」とアウェイの記者席に現れ、菅野の投球に眼を凝らしていた。MLB公式サイトが3月17日、「各チームで最も印象に残った選手」という企画でオリオールズからは菅野を選出していたことからも示されている通り、短期間に注目を浴びる選手になった感がある。

「あそこの球をもっていかれたのは人生初」

 もっとも、菅野が訪れたのは最高峰のメジャーリーグなのだから、すべてが順風満帆というわけではない。ヤンキース戦では確かにジャッジから奪った三振がハイライトにはなったが、実は反省の多い登板でもあった。

 序盤は細かな制球を欠き、初回に昨季24本塁打&40盗塁のジャズ・チザムに2点適時二塁打を打たれて今オープン戦の無失点記録が11イニングでストップ。3回には同じチザムに内角高めの速球を3ラン本塁打にされ、「あそこの球をもっていかれたのは人生初体験。ボールじゃなかったですか?」と呆然としていた。メジャーの破壊力を実感し、同じ地区内のチームに苦手打者を作ったのは不安材料ではある。

【次ページ】 MLBスカウト「経験はあるが球威はない」

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