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「記者がコーチ抜擢」メッシ健在の王者アルゼンチンから学ぶ…“日本代表W杯優勝”を夢物語にしないカギ「鎌田大地と久保建英の連動もそうでは」 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2025/03/22 17:13

「記者がコーチ抜擢」メッシ健在の王者アルゼンチンから学ぶ…“日本代表W杯優勝”を夢物語にしないカギ「鎌田大地と久保建英の連動もそうでは」<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

バーレーン戦の勝利を決定づけた鎌田大地と久保建英。彼らの起用法など、「W杯優勝」を掲げる日本代表には様々な試みが必要となりそうだ

「フットボールでは、個人だけを見ても分析などできない。なぜならこのスポーツは、選手同士の関係性で成り立っているからだ」

 例えばテレビゲームなどでは、個人の能力の総数がそのままチーム力に反映されそうだが、実際にピッチに立ったことがある人なら、選手とその周りにいるチームメイトによって、総力は足し算にも引き算にも、掛け算にも割り算にもなることを知っている。人間同士の感性やリズム、あるいは単に相性の良し悪しによるものだろう。ケミストリーが良ければ、能力以上のものが引き出され、そうでなければ、本来の力が発揮できなくなる。それがフットボールというチームスポーツだ。

鎌田と久保の連動も新たな化学反応だった

 バーレーン戦の主な勝因のひとつに、これまであまり試されなかった化学反応がある。そう、鎌田と久保のコンビネーションだ。

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 森保一監督は2列目の軸を南野拓実と考えているようで、3次予選の7試合のすべてで彼を先発に起用し、鎌田か久保のどちらかをそのパートナーに据えている。バーレーン戦では南野と久保がスタートし、63分に南野に代えて鎌田を投入。これで流れを引き寄せ、3分後に久保のアシストから鎌田がスキルフルなゴールで先制した。さらに74分にも、久保のパスから鎌田がゴールを狙ったが、シュートは枠を外れた。

 このふたりは明らかにフィーリングが近そうに見えた。3次予選で彼らが共演したのは、敵地でのバーレーン戦終盤の25分間、中国とのアウェー戦の後半20分間、そしてこの日の後半27分間のみ。試合後、鎌田はこの点について次のように話した。

「僕たちも一緒にプレーできたらいいねっていう話をしていました。タイミングはだいぶ遅かったなと思いますけど。彼自身がすごい選手だし、感覚的に合うところも多いので、一緒に出たらいいプレーが見せられると思っていた。今日はしっかり良い関係性を見せられたかなと」

さらにポジティブな化学反応を

 本大会までの1年3カ月で、選手の誰もが自らの能力を高めようとするはずだ。その上で指揮官が最適なケミストリーを見出し、本戦で選手たちが実力以上のものを出せれば、個々の能力で上回る相手からも勝機を見出せるかもしれない。

 早々に予選を突破したことで、テストの機会はいつもより多く残されている。過信せず、地に足をつけ、残された時間を有意義に使う。壮大な目標へ向けて、さらにポジティブな化学反応が起きることを願っている。〈サッカー日本代表特集:つづく〉

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