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「記者がコーチ抜擢」メッシ健在の王者アルゼンチンから学ぶ…“日本代表W杯優勝”を夢物語にしないカギ「鎌田大地と久保建英の連動もそうでは」 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2025/03/22 17:13

「記者がコーチ抜擢」メッシ健在の王者アルゼンチンから学ぶ…“日本代表W杯優勝”を夢物語にしないカギ「鎌田大地と久保建英の連動もそうでは」<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

バーレーン戦の勝利を決定づけた鎌田大地と久保建英。彼らの起用法など、「W杯優勝」を掲げる日本代表には様々な試みが必要となりそうだ

 個人的にはまずベスト8に入ることが現実的なターゲットと思えるが、いずれにせよ、どちらも高いハードルだ。出場枠が増えたことにより、今大会から決勝トーナメントは32チームで争われる。つまり、一発勝負のノックアウトステージで少なくとも2回勝たなければ、8強に到達できないのだ。

 世界の頂点に立つには、そこからさらに3つの白星が必要になる。その間、リオネル・メッシが今なお健在の王者アルゼンチンや、キリアン・エムバペを擁するフランス、ラミン・ヤマルが輝く欧州覇者スペイン、トーマス・トゥヘル新監督が統率するイングランドなど、真の強豪との対戦があるはずだ。

「個の力」「個人のレベルアップ」だけでなく

 ではその目標を成し遂げるには、何がカギになるのか。バーレーン戦後に鎌田にそう問いかけると、間髪入れずに「個の能力じゃないですかね」と答えた。クリスタル・パレスに所属する28歳は続ける。

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「(日本代表には)今でも世界的に素晴らしい選手がたくさんいると思いますけど、まだまだ良くなれると思う。個の能力が上がれば上がるほど、自分たちの目標に近づけると思います」

 同じ質問を上田綺世にも投げかけると、フェイエノールトに在籍する26歳のストライカーは少し考えたあとに、「個人個人のレベルアップじゃないですかね」と応じた。

 ピッチ上でプレーする選手からすれば、それ以外の回答はないのかもしれない。先に挙げた列強には、チャンピオンズリーグやプレミアリーグなど、トップ中のトップレベルで日々研鑽を積む選手たちがひしめいている。またW杯のような代表の大会では、戦術的な練度よりも、個々の能力の差が勝負の行方を決しがちだ。

 ただし指導陣は、それ以外のことも熟考しているだろう。本大会までのマッチメイク、キャンプ地の選定、ロジスティクス、食事、コンディショニング、ピーキング、戦術、セットプレー、相手の分析とスカウティングなどなど、多岐にわたるはず。

記者が世界王者アルゼンチンのコーチ兼分析者に

 さらにピッチ上の事象にかぎれば、現世界王者アルゼンチンのコーチが明かした興味深いポイントがある。

 筆者の仕事仲間で英紙『ガーディアン』などに健筆をふるうジョナサン・ウィルソン記者は昨年、ひょんなことからアルゼンチン代表に短期間のアシスタントコーチ兼分析者として招かれた。結局、2週間ほどで職を終えることになったが、フットボールライターが実際のトップレベルの現場で得たものは、実に有意義だったようだ。

 彼を抜擢したアルゼンチン代表のアシスタントコーチ、マティアス・マナはこう言った。

【次ページ】 鎌田と久保の連動も新たな化学反応だった

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