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「走るを通して義足ユーザーの可能性を」“総合福祉機器メーカー”オットーボック・ジャパンの挑戦「パラリンピックでは無償修理サービスも」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byWataru Sato
posted2025/02/18 11:00

オットーボック・ジャパン代表取締役社長・深谷香奈氏
「無償にしているのは、国や地域によって使えるお金が多い、少ないに関係なく、サービスを受けてもらうためです。大会までまったくメンテナンスしないで持ってくるアスリートもいます。1日に100以上の要請があって、技術者はシフト分けしているとはいえ早朝から深夜まで修理、メンテナンスに追われる日々でした。持ち運ばれてくる修理サービスセンターでの対応ばかりでなく、試合が行われる最中にも対応できるよう、競技会場での業務もあります。目まぐるしく忙しい日々ではありましたが、スタッフはみんな一生懸命でした。志がとても高く、難しいリクエストがあっても周りと相談しながら解決策を見つけてスピーディーにこなしていました。素晴らしいチームだとあらためて感じることができました」
昨年のパリパラオリンピックにもジャパンから技術者を派遣。パートナーとしてパラリンピックを支える使命感が、オットーボック全体で共有されている。深谷の口調にも自然と力が入る。
「パラリンピックはリハビリを発端に始まっていて、人が再生していく力というものを見せていく意義深いイベント。共生社会の実現を含めた社会意義という側面においても、これからも大会をサポートしていけたらと考えています」
義足ユーザーに「自信を持って前に出ていってほしい」
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ランニングクリニック、パラリンピック無償修理サービスを軸に、これからもスポーツと社会へのコミットメントを果たしていくつもり。
続けてきたランニングクリニックが様々なつながりを生み出し、昨年11月には兎澤が所属する富士通との共催で「Running Day」を開催している。またクリニックの参加者との縁からゴルフクリニックの実現にも至っている。義足ユーザーのみならずイベント自体の可能性を広げているのがとても興味深い。
深谷は言う。
「ランニングクリニックの創始者であるポポフは、参加者に対していつも『みんなで仲間になって、求めていきましょう。声をあげていきましょう』と言っていて、我々としても義足ユーザーのみなさんに、自信を持って前に出ていってほしいという思いがあります」
求めていけば、そこに応えていく社会がある。誰もが求めていけるように、そして自分たちでも応えていけるように。
2025年のランニングクリニックは秋に開催予定だという。これからもみんなで手を取り合って、ともに走っていく――。
