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東大・京大30人、国公立大医学部にも20人超の合格者…富山の超進学校がスポ薦なしで“県大会31連覇中”王者を倒して「全国高校駅伝出場」までのウラ話
posted2025/02/22 11:00

2023年、富山商業の県駅伝32連覇を阻止し全国高校駅伝へ初出場を決めた富山中部高の女子駅伝チーム。その裏には超進学校ならではの苦労もあった
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山崎ダイDai Yamazaki
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富山中部高校提供
受験シーズン真っ盛りの2月。月末には国公立大の試験も控え、いわゆる「進学校」と呼ばれる高校にとっては、その後の評判にもかかわる大一番が待っている。毎年東大・京大に多くの合格者を出す、富山中部高校もそのひとつだ。だが実は近年、同校の女子駅伝チームが大躍進を見せている。県の絶対王者を止め、全国の舞台までたどり着いた活躍の裏には、一体何があったのだろうか?《NumberWebノンフィクション全2回の1回目/つづきを読む》
「これ、もしかすると都大路も可能性あるなぁ――」
いまから2年前の2023年6月のこと。富山中部高校陸上競技部で監督を務める水原豊は、インターハイに向けた北信越ブロック大会の会場でそんなことを考えていた。
この年、同校からは当時3年生の佐伯紅南と2年生の柴田美冴の2人が、女子800mで北信越大会を突破し全国大会出場を決めていた。5人でタスキをつなぐ高校女子駅伝において、中距離とはいえ全国クラスが2枚いるというのはそれだけで大きなアドバンテージになる。
県大会31連覇中…「絶対王者」を倒せる?
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当時、富山県の高校駅伝は富山商高の“一強”と言っていい状況が続いていた。
実に女子駅伝では県大会で31連覇中。一方で、前年の富山中部高はバスケットボール部の選手を借りてきて出場するレベルで、水原の言葉を借りれば「そもそも勝負にすらなっていない。勝とうと思ったこともない」状況だった。
ただ、ちょうどこの頃の在校生は、コロナ禍真っ最中に進学を決めねばならなかった世代でもあった。当時は部活動の先行きが不透明だったこともあり、以前ほど選手が強豪校に一極集中しなかった事情があった。実際に富山中部高にも、中学時代に実績のある選手がちらほらと入学してきていた。
そんな背景があった中で、もともと地道な活動には定評があった同校に2022年、陸上競技経験のある指導者の水原が赴任した。その後の1年間の指導の甲斐もあって、早々に個人では全国行きの切符をつかむ選手が出てきたわけだ。しかも4月に入ってきた新入生も夏頃にはある程度、育ってきていた。