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「完全に無音の中を走っています」《金メダル》パラ陸上・佐藤友祈が稲垣吾郎に語っていたレース中の“境地”
posted2021/08/28 11:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
東京パラリンピックの陸上競技でメダルを狙う3人が一堂に会した。
リオのT52(車いす)クラスの400m、1500mで銀メダルを獲得、現在は両種目の世界記録保持者でもある佐藤友祈。走り高跳びT64(片下腿義足)クラスで6大会連続出場を決めたベテランジャンパー、鈴木徹。T11(全盲)クラスの1500mで3大会連続出場を決め、5000mでは2012年ロンドンで銅、現在も世界ランク1位の和田伸也。2019年11月にドバイで行われた世界パラ陸上選手権で東京2020の代表に内定した3選手だ。
稲垣 佐藤選手は400mと1500mの世界記録保持者で、本番でも金メダルが本命視されてしまう立場ですよね。すごいプレッシャーだと思います。
佐藤 周囲の期待はすごく感じます。今回の世界パラでは、ゴールするまで本当に緊張しました。無事内定できてホッとしたというのが正直な感想です。
鈴木 ホッとしたよね。でも、実は世界パラで内定条件である「4位以内」を確定させたあと、僕だけは内定までに少し時間がかかったんです。
稲垣 どうしてですか?
鈴木 種目自体が東京パラで開催されるかどうか保留になっていたんです。パラリンピックで正式競技になるためには3カ国6人以上のエントリーが必要なんですが、17年の世界パラでの参加者は5人。走り高跳びは競技人口はそれなりに多いのですが、参加標準記録を越えられる選手が少ないんです。でも今回の世界パラで9人に増えたので、12月に入ってようやく実施が決まりました。正直、ヒヤヒヤで、2人にはない緊張感がありました(笑)。
佐藤 僕らにとってパラリンピックで競技が実施されるだけでも、ありがたいです。
種目が統合される傾向がある
和田 今の潮流としては種目が統合される傾向にあります。ブラインド(視覚障がい)でも、マラソンは全盲の選手と重度弱視の選手が一緒に走るようになりました。以前は分かれていたのですが……。
稲垣 選手にとってはいいことですか?
和田 難しいところです。大会本番の条件の違いもそうですが、レースに至るまでの練習環境が全盲と弱視の選手ではまったく違うと思います。私のような全盲の選手はガイドランナーと二人三脚でしか走れないので、練習をするにもガイドランナーを探さないといけません。弱視の選手の中には一人で走れる選手もいますから、どうしても不利は生じる。そのこともあって私はもともとマラソンが主戦場だったのですが、今は同じ全盲の選手だけで争える1500mと5000mで勝負しています。
鈴木 陸上は種目数が多いですし、スケジュールも長い。クラスを統合して減らそうという流れは確かにあります。それは、良い悪いではなくて、クラス分けはパラ陸上競技にとって永遠の課題だと思います。