松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
義足を脱ぐと血だらけ…“世界4位”秦由加子が松岡修造に教える「過酷すぎる」パラトライアスロンの世界
posted2020/11/15 11:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Nanae Suzuki
松岡修造がパラアスリートとじっくり向き合い、半生を掘り下げていく「松岡修造のパラリンピック一直線!」。新型コロナウィルス感染拡大の影響で約半年ぶりの取材に臨んだ松岡さんは、連載第13回のゲストにパラトライアスロンの秦由加子選手(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・稲毛インター)を迎えた。
秦選手はスイム(750m)、バイク(20km)、ラン(5km)の3種目をこなす過酷な競技パラトライアスロンPTS2クラス(立位/膝上切断など)で2016年リオ大会に出場。もともとスイマーだったことから得意な水泳を生かし、パラリンピック初出場にして同競技における日本人最高位の6位入賞を果たした。 1年延期となった来夏の東京パラリンピック(2021年8月24~9月5日)では自身2回目のパラリンピック出場とメダル獲得を目指す秦選手。彼女の課題だったバイクとランもこの4年で力をつけ、世界の強豪たちとの差を着実に縮めてきた。
右足を膝上で切断している大腿切断の女子選手は日本でただ一人のため、ここまでの競技生活は試行錯誤の連続だった。これまでに数多くの義足アスリートを取材し、義足での歩行体験もある松岡さんもトライアスロン用の義足に触れるのはこれが初めてで、特殊な構造に興味津々。秦選手の室内トレーニングを見学してから始まったインタビューでは、待ちきれないとばかりに質問が飛んだ。(全4回の1回目/#2、#3へ)
「膝」がついていない特殊な義足
松岡:いきなり質問です。秦さんは走るとき義足側の足を外側に振り回すようにされていますが、それはどうしてですか?
秦:いきなり鋭い視点ですね。陸上競技で使う大腿義足(太ももから履く義足)には「膝継手(ひざつぎて)」と呼ばれる部品があって、その名の通り膝関節の役割をします。でも私の義足には膝継手がついていないんですね。ということは膝が曲がらない、ただの棒みたいな形状なんです。だから、まっすぐ前に足を出そうとすると、つま先が地面に引っかかってつまずいてしまいます。そうならないように右足全体を外側に振り回すようにして走っています。
松岡:そっか、僕の知っている義足とは膝の構造が違うんですね。僕も以前、体験用の義足を履いて歩いたことがあるんです。
秦:そのときって、膝から下をまっすぐ前に振り出すように言われませんでしたか? 踏み出したときに膝がガクンと曲がって転ばないように。
松岡:そうでした、そうでした。