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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「なぜ日本人の天才19歳はJリーグを断ったのか」慶応大生がオランダ1部で“いきなり年俸4500万円”の衝撃…日本人代理人が明かす「J関係者から“荒らされた”の声も」
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木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2025/02/02 11:09

オランダ1部・NECナイメヘンに所属する塩貝健人(19歳)。慶應大から異例のステップアップした裏側を代理人が明かす
では、選手本人はどう受け取ったのだろう。一般の企業で初任給にこれだけ開きがあったら、後者を選ぶのが普通だ。報酬の高さは判断に影響したのだろうか?
「うーん、それは本人に聞いてないのでわからないですが、よりグローバルな市場へ挑戦できるという意味で意思決定に影響はあったかもしれませんね。ただし、だからと言ってビッグクラブに行けばいいというわけではありません。選手はそのつど適切なステージを選ぶべきです。塩貝選手はそれをよくわかっており、ナイメヘンのメディカルチェックを受ける直前に他のクラブから『倍払うからうちに来てくれ』と打診がありましたが、塩貝選手は一切迷いませんでした」
「給料ゼロ」“特別指定制度”の問題点
Jリーグ側の視点に立つと、Jクラブに特別指定されていた若手を海外に連れていく代理人に悪いイメージを持つサポーターもいるだろう。実際、龍後のもとには「荒らされた」、「引き抜かれた」というネガティブな声が伝わってきた。
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しかし同時にJクラブの強化担当者から「意味のある仕事」というポジティブな声も届いたという。
「大学生や高校生に報酬を払わずにJリーグの試合に出場させる特別指定制度に疑問を持っているサッカー関係者は少なくないんですよ(※特別指定選手は無給)。やりがい搾取の部分がありますから。ある強化担当者から『日本サッカーを前に進める意味のある仕事だ』と言われました」
塩貝は横浜FCジュニアユース時代、韓国遠征約20人のメンバーにも入れない「落ちこぼれ」だった。だが、ボディビルダーだった父からフィジカル強化の教えを受け、國學院久我山高校で急成長。元々7秒台だった50メートル走のタイムが3年時に6秒フラットになった。慶應大学に進学して関東大学3部および2部でプレーしていたが、代理人の力を借りて大逆転でオランダ行きを勝ち取った。
これまでの日本サッカー界では、しっかり大学を卒業してからプロになった方がいいという考え方が主流だった。プロで成功できなかった場合、セカンドキャリアで大卒資格や教員免許が生きるからだ。
だが、既成概念にとらわれていたら、規格外のスターは生まれないだろう。選手一人ひとりに合ったオーダーメイドのキャリア設計が必要であり、それをサポートする代理人の存在が不可欠である。
龍後の他にヨーロッパ現地の会社で働く日本人代理人はほぼいないが、一方で日本に拠点を置きながら社員をヨーロッパに常駐させる事務所が増えている。彼ら新時代の代理人によって、枠にとらわれないさまざまな移籍ルートが開拓されていくに違いない。
<続く>
