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プロ野球PRESSBACK NUMBER
プロ野球“じつは危機的状況”とにかく打てない問題「退屈な試合でファン離れも」「引退する選手が出る可能性」専門家も衝撃…最悪のシナリオとは
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byNanae Suzuki
posted2024/06/15 11:01
ホームランが激減している今。起こりうる最悪のシナリオとは?(写真はイメージ)
日本においては観客動員、視聴者数ともにスポーツ界のトップに君臨する野球だが、退屈だというイメージが定着してしまうことで、人気が急落する未来がないとは言い切れない。
「ここ数十年でもっとも得点が入らない環境ですからね。長く野球を見ている方も、最近ファンになった方も、10年後に今のプロ野球を振り返って『あのころは楽しかった』と懐かしむことはあまりないのでは。野球界として危機感を持たなければいけない状況だと思います」
違反球で「名選手が引退した過去」
さらに見過ごせない問題が、成績の下降による選手のキャリアへの影響だ。2006年から2010年まで5年連続3割・30本を達成していた小笠原道大は、“違反球”こと飛ばないボールが使用された2011年、打率.242、5本塁打という低調な成績に終わった。さらに翌2012年は打率.152、0本塁打と不振を極め、推定年俸は4億3000万円から7000万円にダウン。ボールによって運命を狂わされた選手の代表格に挙げられる。
また、2012年かぎりで現役を引退した現ソフトバンク監督の小久保裕紀も、同年の引退表明会見で「フリーバッティングでボールが飛ばなくなったとか、今シーズンも完全にホームランやなと思った打球がセンターフライになったり、そういうことが重なった」と述べている。もちろん、どちらの例も故障や加齢などが考慮されるべきだとはいえ、少なからずボールの影響はあったと考えるのが自然だろう。
一方で、2011年に48本塁打を放ち、圧倒的な成績でホームラン・打点の二冠王に輝いた中村剛也や、2012年に打率.340、27本塁打、104打点をマークした現巨人監督の阿部慎之助のように、ボールが飛ばない環境下でも結果を残した選手はいる。だが宮下氏は、「好成績を残した選手もボールの影響は受けていたのでは」と推測する。
「2011年の中村剛也選手にしても、本来ならもっととてつもない数字を残していた可能性もありますよね。ボールの飛距離が数メートル落ちることで、例年であれば40本打てていた選手が30本に、30本が20本に、15本が5本になっているかもしれない。結果的に、ホームラン数によるインセンティブで年俸を稼ぐのが難しくなってしまう。もちろん小久保監督のように、引退する選手が出てきてしまう可能性もある」
投手にとっても不幸…なぜ?
影響を受けるのはバッターだけではない。6月14日を終えた時点で防御率0点台および1点台の選手が9人(セ・リーグ6人、パ・リーグ3人)いるように、“投高打低”ゆえにピッチャーもかえって突出した成績を残しにくいという側面もある。宮下氏が続ける。