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最新戦術でも交代策でもなく…「監督は僕たちの誰よりも上手い」シャビ・アロンソ42歳“新名将の5要素”「私の仕事はまだ終わってない」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTaisei Iwamoto
posted2024/05/27 11:11
42歳にして欧州サッカーの新名将としての地位を確立したシャビ・アロンソ。その指導法で目立つ《5つのキーポイント》とは?
選手に言い訳を許さないアロンソは、自身も言い訳はしない。アフリカネーションズカップに選手を送り出さないといけないという苦境を嘆くのではなく、それを逆手にとる采配を見せて、チームを活性化してみせた。
ケガした選手が診断を受けた時のエピソード
《その3:選手に寄り添う》
アロンソは人としての温かさを感じさせるエピソードにも事欠かない。レバークーゼンのエースストライカーがその証言者だ。
今年1月、ボニフェイスはドバイで行われていたナイジェリア代表の合宿中に鼠径部(そけいぶ)を負傷してしまった。その後のやりとりを彼はこんな風に明かしている。
「ドイツに戻ってきて、僕がドクターの診断を受けているとき、監督は僕の横にいてくれたんだ」
そして、ボニフェイスはドクターから「手術を受ける必要がある」と宣告された直後に、監督はこんな言葉をかけてくれたという。
「とてもハードな日々になるけど、前を向く必要がある。ただ、焦る必要はないさ。オマエはとても強い人間なのだから、きっと前のように戻ってこられる。そして、チームみんながそのために全力を尽くすから!」
クラブの戦略にも深くかかわるアロンソらしい振る舞いであると同時に、彼の人間性を感じさせる。選手との距離感の近さは彼を語る上で欠かせない資質だ。
優勝をほぼ確定させたバイエルン戦後のエピソード
《その4:自分だけの手柄にしない》
カリスマ監督がチームを追われる王道のパターンがある。それは選手がこう感じるときだ。
「『チームが良い時は監督のおかげ。悪い時は選手たちのせいになる』。そんなのやってられるかよ!」
カリスマ監督と評価されるがゆえの難しさはある。実際、レバークーゼンにおけるアロンソの存在感はあまりに大きく、レバークーゼンの強さが話題に上がるとき、その中心の多くはアロンソだった。
ただ、彼は従来のタイプと一線を画している。
2月11日、バイエルンとのホームでの直接対決では3−0の大勝を飾り、念願の初優勝を大きく手繰り寄せた。サポーターは歓喜して、ブンデスリーガ恒例のセレブレーションが始まった。ゴール裏スタンドの前に選手たちが集まり、ともに万歳三唱をしてから踊り出す流れだ。
ただ、サポーターたちは、それだけでは満足しなかった。
彼らは、アロンソ監督の名を叫び、選手たちに並んでゴール裏スタンドの前に来るようにうながしたのだ。
そこでアロンソがとった行動が、彼らしさを象徴していた。