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最新戦術でも交代策でもなく…「監督は僕たちの誰よりも上手い」シャビ・アロンソ42歳“新名将の5要素”「私の仕事はまだ終わってない」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTaisei Iwamoto
posted2024/05/27 11:11
42歳にして欧州サッカーの新名将としての地位を確立したシャビ・アロンソ。その指導法で目立つ《5つのキーポイント》とは?
アシスタントコーチから分析官、ドクターまで計9人のスタッフを呼んで、一緒にゴール裏へと向かったのだ。
偉大なるチームは自分だけではなく、みんなで作り上げた。
監督のそんなメッセージがあの行動には込められていた。
札束攻勢があっても「アロンソは残留してくれるはず」
《5:クラブへの献身》
彼がロルフェスGMと二人三脚でクラブの方針を立て、実行に移したのは第1回で紹介した通り。実は、クラブへの献身という意味でも象徴的なエピソードがある。
2024年に入ってから、アロンソの去就は注目の的となっていた。古巣のリバプールが第一候補とされていたが、同じく古巣のバイエルンも熱心に声をかけており、さらには札束攻勢も辞さない姿勢でパリSGも水面下で動いていたという。
ロルフェスGMはアロンソを失う不安がなかったわけではない。その一方で、こうも考えていたという。
「アロンソは残留してくれるはずだ」
その根拠はクラブの未来やフィロソフィーについて、アロンソが積極的に考え、行動していたからだった。
例えば2月末のこと。トップチームのコーチングスタッフを筆頭に、育成組織や女子チーム、そしてスカウト部隊までが一堂に会してのワークショップが行なわれていた。テーマは、どのようにクラブを発展させ、チームを強化していくのかについて。その席では、熱弁を振るうアロンソ監督の姿があった。
「私の仕事はまだ終わっていない」
果たして、3月29日。アロンソは来シーズンも引き続きレバークーゼンを戦いの場にすると記者会見で発表した。彼は選手たちにクラブへの献身を説いたが、アロンソ自身も全力でクラブの改革にコミットし、ロルフェスGMとともにクラブの方針を作った。それほど多くの人たちの未来にかかわるということは、責任も存在する。それを誰よりもわかっていたのは他ならぬアロンソ自身だろう。
彼は、この席で断言した。
「私の仕事はまだ終わっていない」
ここまで挙げた5つのエピソードは、彼の人間性を象徴するものだ。最近はハーランドやベリンガムのように、大成するためにはフィジカル能力だけではなく、人間性が大事だと言われることが多い。例えば野球界で言えば大谷翔平などはその典型で、これはスポーツ界全体に共通するトレンドのように見える。
そして、そういう選手たちが増えている以上、彼らを指揮する監督にもまた、現代に対応した人間性が問われる時代になっているのかもしれない。その意味で現代に必要なものを兼ね備えている監督が、アロンソだと評しても決して過言ではないだろう。
そんなアロンソに率いられたレバークーゼンの快進撃を象徴するのは「アディショナルタイム」での強さである。彼らはどんなマインドで、試合終盤を戦っていたのか。
<つづく>