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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平に注目が集まりがち「打球速度」だが…同学年カブス鈴木誠也29歳も“ムキムキ肉体改造”でメジャートップ級に急上昇していた
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki,Michael Reaves/Getty Images
posted2024/05/13 17:01
大谷翔平で注目が集まる打球速度。メジャー3年目の鈴木誠也を見てみるとメジャートップクラスの力を手に入れていることがわかる
NPBからMLBに移籍した当初は、他の日本人選手同様、MLBの一線級の投手に対応するのが厳しかったのが、昨年は初めて20本塁打を記録。OPSも強打者の指標である.800を超えた。そして今季は打率も3割を超え、OPSも.900に迫ろうとしていた。
たまたま調子が良いだけではないのか?
いや――そうではないことを示す数字がある。
MLBは、弾道計測機「ホークアイ」と高速カメラなどを組み合わせて、投打守備のデータをオンタイムで表示する「スタットキャスト」を全30球団の本拠地球場に配備している。データはMLB公式サイトに公表されているが、このデータの「初速(Exit Velocity)」の最速(MAX)の数値が、急上昇しているのだ。
過去3年で大谷は常にベスト5、では誠也は?
以下、2022年から3年間の「スタットキャスト」による数値上位5傑と鈴木の数値。数値はマイル(mph)、参考までに、120mphは193km/h。
〈2022年〉
1.クルーズ(パイレーツ)122.4
2.スタントン(ヤンキース)119.8
3.大谷翔平(エンゼルス)119.1
4.ゲレーロJr.(ブルージェイズ)118.4
5.ジャッジ(ヤンキース)118.4
125.鈴木誠也(カブス)111.3
〈2023年〉
1.アクーニャJr.(ブレーブス)121.2
2.スタントン(ヤンキース)119.5
3.デラクルーズ(レッズ)119.2
4.大谷翔平(エンゼルス)118.6
5.オルソン(ブレーブス)118.6
31.鈴木誠也(カブス)114.6
〈2024年〉
1.スタントン(ヤンキース)119.9
2.クルーズ(パイレーツ)119.7
3.大谷翔平(ドジャース)119.2
4.ゲレーロJr.(ブルージェイズ)117.6
5.アルバレス(アストロズ)116.8
※鈴木誠也(カブス)115.0(14位相当)
BBE=フェアゾーンに飛んだ打球が規定数(162)以上の選手は毎年、両リーグ合わせて250人前後いる。その中で大谷は常にベスト5以内をキープしている。さすがとしか言いようがない。
一方で鈴木誠也は1年目は中位の125位だったのが、2年目は31位、そして今年は規定には達していないものの、14位相当まで上がってきている。
「フライボール革命」では、打球速度が98mph(158km/h)以上、打球角度が26度~30度(バレルゾーン)で上がった打球が最もヒットやホームランになりやすいとされる。そして打球速度が上がれば、バレルゾーンは大きくなる。
肉体を鍛え上げたことで打球速度が上がった
大谷が、反対方向に大きな本塁打を打ったり、低い弾道でスタンドに突き刺さる本塁打を打つのは、打球速度が圧倒的に速いため、バレルゾーンが他の打者よりも大きくなっているから。一見、当たり損ねのような当たりでも大谷のように打球速度が速ければスタンドインするのだ。
MLBでは「打球速度」こそが、打者として活躍するための最重要指標である。