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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平に注目が集まりがち「打球速度」だが…同学年カブス鈴木誠也29歳も“ムキムキ肉体改造”でメジャートップ級に急上昇していた
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki,Michael Reaves/Getty Images
posted2024/05/13 17:01
大谷翔平で注目が集まる打球速度。メジャー3年目の鈴木誠也を見てみるとメジャートップクラスの力を手に入れていることがわかる
打者・大谷はMLBに移籍して以降、ひたすら「打球速度」をアップさせることを考え、そのために筋肉量を増やすためのトレーニングを続け、プロテインも摂取してきた。筋肉量が増えた分だけ、パワーがアップしたということだ。
鈴木誠也もMLBに移籍する1~2年前くらいから上体の筋肉が付き始めたが、MLBに移籍後は、さらに上体の盛り上がりが顕著になってきた。それとともに、打球速度が上がり、バレルゾーンも広がって安打やホームランが出るようになったのだ。
スタットキャストの「初速(Exit Velocity)」をはじめとする数値は、打者のポテンシャルを測る数値としてMLBでは非常に重視される。鈴木はこの数値が上がったことで、チームも鈴木を大谷と同じ「2番」という、今のMLBでは「最強打者の打順」に据えている。
「大谷は特別な存在」から新たな可能性を拓く誠也
昨年のWBCで、猛烈な速度の打球を打ち上げる大谷の打撃練習を見たヤクルトの村上宗隆は、「初速(Exit Velocity)」の数値を聞いて、自分の数値をはるかに上回っていることに大きなショックを受けたという。村上もNPBではトップクラスの打球速度なのだが、MLBで活躍するにはさらに大きなパワーが必要なことを知ったのだ。
ちなみに現在ILのレッドソックスの吉田正尚は2023年は112.3mph(101位)、今年は105.3mph(263位相当)。この数値が伸び悩んでいるのは懸念材料と言える。
今季の吉田は主としてDHで起用されているが、単打は出ているものの本塁打は2本、OPSは.736、今後.800は欲しいところだ。
筆者だけでなく多くのファンは、これまで「大谷翔平は特別の存在」だと思ってきた。大谷には「天賦の才能」があって、他の日本人にはマネのできない異次元の活躍をしていると思ってきた。
しかし少なくとも「打撃」に関しては、鈴木誠也が「新たな可能性」を切り拓きつつある。
1カ月弱のILのブランクは痛かったが――右の強打者として、今後、鈴木誠也が大きな実績を残せば、日本人メジャーリーガーの歴史は、新たな段階へとステップアップすることになるだろう。<第1回「今永のフォーシーム」編からつづく>