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「後の日本王者が3人、箱根駅伝で区間新が2人」福島・学法石川高“奇跡の世代”誕生のウラ話…「ロードは走らない」超特異な練習スタイルのワケ
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byAFLO
posted2024/01/20 17:00
遠藤日向(左)や阿部弘輝(右)ら名選手が揃い、まさに「奇跡の世代」だった2015年の学法石川高。彼らの成長の裏にあったものは…?
ライバル校と全く違うカラーを打ち出して、選手をスカウトしたという。もちろん、それは単に差別化を図ることだけが狙いではない。
「僕自身、実業団まで競技を続けましたがスピードがなくて。しかも年々、スピードが落ちていくのを実感していました。そういう経験もあって『高校時代にもっとスピード練習をやっておけばもう少し違ったかな』という思いがずっとあったんです。高校生のうちは短い距離をどんどんやらせようと思いました」
一般的に神経系の働きが大きく作用するスピード系の練習は、10代が最も効果があるとされる。スタミナ面は後から補強できるが、絶対的なスピードは若いうちに鍛えないと効果が出にくい。
学生時代、中大のエースだった松田は、全日本大学駅伝の最終区で早大の渡辺康幸(現住友電工監督)に競り負けた苦い思い出もあった。そういった自身の経験もあって、松田はスピード重視の指導を心がけてきた。その特色が少しずつ浸透し、県内の有力選手が入学するようになっていった。
ロードはほとんど走らず、スピード重視のスタイル
ちなみに、練習ではロードをほとんど走らない。これもまたガクセキ独自のスタイルであり、座骨神経痛に苦しんだ末に現役を引退せざるをえなかった松田自身の経験が大元にある。
「高校生は成長期にあるので、硬い路面を走らないことでケガのリスクを減らすことが第一にあります。あとは、着地衝撃が大きいと貧血になりやすいことも理由です(※着地衝撃で足裏の毛細血管にある赤血球が破壊されることが原因で、貧血を起こしやすくなる)」
週に1~2回は全天候型のトラックを走るが、その他の練習は石川町内のクロスカントリーコースや、近隣の中学校の土のトラックで行っていた。
実は当時からガクセキはトラック種目では全国的な実績を出していたのに対し、駅伝ではそれと比すれば結果が出ていなかった。そんな状況もあって、「ガクセキはロードに弱い」という声が耳に届くこともあったという。もちろん、日ごろからロードを走る経験値を増やしていけば、その状況自体は改善する可能性は高かった。
それでも、松田はその方針をぶらすことはなかった。